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賛成・反対・白票・棄権・不行使・案分

2021年11月22日

政策調査部 主席研究員 鈴木 裕

何かを投票で決める場合、どういう投票結果であれば可決(あるいは否決)と判断するか、自明であるわけではない。投票の前に可決要件を決めておかなければ、投票後にもめることになる。

ある議案、例えば「忘年会を行う件」の賛否を10名の参加予定者に投票させたところ、賛成4票、反対3票、白票1票、棄権1票(「棄権」と書いて投票)、投票権の不行使1名だったとする。忘年会をやりたい人が投票管理者なら反対より賛成が多いのだから可決にするだろう。相対多数決制(plurality voting)だ。しかし、忘年会が嫌いな人であれば、賛成は有権者10名、投票総数9票の半数にも達していないので否決とするだろう。こちらは絶対多数決制(majority voting)と呼ばれるようだ。

投票総数の過半数の賛成を可決要件として、白票・棄権票を投票総数に含めるなら9票中賛成4票で過半数には届かず否決だが、白票・棄権票を除外するなら7票中賛成4票で過半数となり可決だ。投票用紙に賛成欄と反対欄を作って、さらに白票や余事(例えば「棄権」と記入)記載の扱いを明示しておけば、混乱は抑えられそうだ。棄権欄を設けることも考えられる。白票は賛成票として扱うが、棄権票は投票総数に含めるものの賛成とも反対ともしないとしても構わない。この場合、棄権票は賛成票にカウントしないという点で実質的に反対票と同じだ。しかし、白票・棄権票を投じた人が、どのように扱われるかをよく理解しておらず、自己の真意とは違う扱いをされたなどと言い出すとまたこじれる。

別な議案、例えば「居酒屋ダイワで忘年会を行う件」の賛否が、賛成5票、反対4票、不行使1名だったとする。可決でよさそうにも思えるが、有権者のうち何名かが実はダイワの常連で、忘年会をダイワで開けば後々何か便宜を受けそうだとしたらどうか。決議事項に関して特殊な利害関係を持っている人には投票を認めるべきではないと反対派が言えば、これも厄介な話になりそうだ。

さらに別な議案、「居酒屋、イタリアンのどちらで忘年会を行うか」で、投票総数の過半数の票を集めたところに決めるとした。そもそも議案のたて方自体曖昧で問題がありそうなのだが、結果が居酒屋5票、イタリアン4票、「イタリアン居酒屋」1票だったとしよう。どれも投票総数10票の過半数に届かないが、選択肢にないイタリアン居酒屋票を投票総数から除外したり、居酒屋0.55票・イタリアン0.44票(1票を居酒屋5票:イタリアン4票の比率で割り振る)に案分したりするなら、居酒屋が過半数となる。

しかし、除外や案分が正しい方策かどうかは分からない。イタリアン居酒屋と書いて投票した人の意思は、居酒屋とイタリアンのどちらでもいいと解することもできれば、イタリア料理で酒を飲みたいということだとも思えるからだ。どのように扱うべきか不明な票は、記名投票であれば投票者の真意を確認できそうだが、確認によって決議の行方が変わるようなことがあれば、問題が複雑化する。投票を締め切った後に投票用紙以外の方法で投票者の意思を探るべきではないという反発が起きるだろう。居酒屋とイタリアンが同数になり、どちらにも決定できないから忘年会は取りやめとなると、どちらでもいいからやりたいという人が出てきて、なし崩しで投票結果が変更されるかもしれない。

今年の10月は、こうした投票制度の設計に関する問題が実際にいくつか現れた。上場会社の株主総会では、経営統合議案や買収防衛策導入議案の決議で争いが生じた。衆議院選挙では、同一の党名略称があったため、案分処理が行われた。株主総会では、議案の種類によって可決要件が多様だし、投票制度のディテールは法律や規則の条文を見てもはっきりしないことが少なくない。また、法律上許容されるからといって、具体的な場面で適切な対応となるかは、また別な話だろう。株主の意思を正確に測り、経営に反映させていくのは当然であるが、言うほど簡単にできることでもなさそうだ。

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主席研究員 鈴木 裕