コロナ禍を契機に「人との交流」が多様化する可能性
2021年10月05日
日本で初めて新型コロナウイルス感染拡大防止のための「緊急事態宣言」が出てから間もなく1年半が経過する。この1年半を振り返ると、多くの方がそうであるように、筆者もリアルで直接会う形での「人との接触」が激減した。筆者は一方で、ビデオ会議などバーチャルを含めた「人との交流」はむしろ増えたと思っている。
筆者はコロナ禍前から、趣味と仕事を兼ねた、勉強会や飲み会を通じた夜の時間帯の交流が好きだった。ただし、幼い子がいる中でそれに参加することはその日の家事育児をパートナーに丸投げすることを意味する。夫婦で家事育児を分担しながら、互いに交流の機会を持とうとしてきたが、それでも月に2、3回参加するのが精一杯だった。
だが、コロナ禍のビジネスで急速に普及し、仕事と家事育児の両立に貢献したビデオ会議は、家事育児と「サードプレイス」(※1)の両立にも大いに役立った。
子どもを保育園に迎えに行った後、パートナーにバトンタッチして19時から21時までの会合に参加し、その後すぐにパートナーから家事育児を引き継ぐということも可能だ。子どもが寝付いた後に家を離れずに22時や23時からの会合に参加することもできる。また、バーチャルでは会場が不要なため、会合を企画する際の準備や案内にかかる手間を減らせる利点もある。昨今を振り返ると、筆者はリアルの勉強会や飲み会への参加はほぼなくなったが、ビデオ会議を活用した勉強会や飲み会での「交流」は週に1、2回のペースで持てている。頻度を単純比較すればコロナ禍前よりも「交流」は増えており、それにより気づきを得る機会も増えている実感がある。
もちろん、リアルな交流にはバーチャルにはない良さがあるし、リアルな交流の「場」である飲食店に再び多くの人が集まれる日が早く訪れることを願うばかりだ。だが、バーチャルな「サードプレイス」は家事育児、あるいは介護などを担っている人でも参加しやすいメリットがあり、今後も定着しそうだ。多様なバックグラウンドを持った人が集まる場では、新しいアイデアが生まれやすい。筆者はコロナ禍を経て、多様な交流の増加がより創造性の高い豊かな社会をもたらすことを予想している。
(※1)家庭、職場(あるいは学校)の他の、より創造的な交流が生まれる「第三の場所」のこと。
レイ・オルデンバーグ著、忠平美幸訳、マイク・モラスキー解説『サードプレイス コミュニティの核になる「とびきり居心地よい場所」』、みすず書房、2013年を参照。
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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟