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アフガニスタンの紛争と食料危機~15年前のタジキスタンでの光景から

2021年09月21日

経済調査部 エコノミスト 増川 智咲

米軍撤退を機に、アフガニスタンでは混乱が広がっている。テレビで現地の状況を見ていて、ちょうど15年前の8月を思い出した。2006年、当時大学院生であった筆者は、アフガニスタンの北に位置するタジキスタンという国にインターンシップのため2カ月滞在した。中央アジアに位置するタジキスタンは、旧ソ連を構成していた共和国の一つで、人口の約8割以上をタジク人が占める。タジク人はアフガニスタン北部にも居住しており、アフガニスタン国内では、パシュトゥーン人に次いで人口に占める割合が大きい。両国の歴史は大きく異なるが、陸続きであることから民族的に共通する部分が少なくない。

15年前の7月末、アフガニスタンとの国境近くにあるタジキスタン南部の地域で地震が発生した。インターンシップの一環として支援活動に同行させていただいたが、犠牲者は多くはなく、建物や水道インフラへの影響も壊滅的ではなかった。こうした中、被災地の風景で鮮明に記憶に残っているのは、これほど乾燥した土地で、どのような産業が育つのか、という疑問を抱いたことであった。

タジキスタンとアフガニスタンは両国とも山岳・高原地帯にあり標高が高い。冬は積雪で陸路が寸断されることも多く、農耕に適した土地が少ない。それでも人口の多くが農業に従事している事実は、産業育成の難しさを物語っている。タジキスタンでは、乾燥地でも育ちやすい綿花が主要産品であるが、近年では小麦や野菜などの生産も増えてきた。他方、アフガニスタンでは、貧困層が麻薬の原料となるケシ栽培に依存することも少なくないという。同国における農業の生産性向上は、食料の安定的な供給という点でも、治安の面からも重要な課題だ。この20年間アフガニスタンで、多くの援助機関が紛争下の緊急人道援助とともに、農業への支援を実施してきたのにはこのような背景がある。

ガニ政権の崩壊による混乱は、人々から住む場所を奪い、多くの避難民を出している。さらに今年は、干ばつの被害が大きいという。10月から始まる冬季は、食糧供給をさらに難しくし、紛争と干ばつという2つの苦難にある人々に打撃となる可能性が高い。日本がアフガニスタンへの2国間援助を再開させるには、外交上時間を要するだろう。今は、食料援助を含めた緊急支援が、迅速に不足なく実施されることを切に願っている。

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増川 智咲

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