在宅勤務かオフィス勤務か、はたまた「バーチャルオフィス」?
2021年09月09日
新型コロナウイルスの感染拡大以降急速に広まった在宅勤務だが、感染状況が良くなればやっぱりオフィス勤務に戻ろうと考える人が多いのは米国でも共通だ。ニューヨークではワクチン接種が進んだ5-6月には、7-9月から原則オフィス勤務とする方針を打ち出した企業も多い。
在宅勤務は従業員にとって柔軟で多様な働き方が可能となるなどメリットも多い。通勤時間が減り、一日が長くなったようにも感じる。一方で、オフィス勤務に戻ることを公表した米国の主要企業は、非対面のコミュニケーションが生産性やイノベーションを低下させうることを懸念しているようだ。オフィス勤務での相互交流の中で、円滑な業務が可能となり、新しいアイデアが生まれるという説明は納得しやすい。
しかし、7月以降の米国内でのデルタ株の感染拡大で情勢は大きく変化した。従業員はオフィス勤務によって自身が感染することを再び懸念し始めた。転職サイトでは在宅勤務可能という項目を重視する人々も多いようだ。企業も感染状況の悪化に鑑み、オフィス勤務の再開時期延期、オフィスでのマスク着用やワクチン接種の義務化など、対策を講じざるを得なくなった。
感染状況が改善すれば、再びオフィス勤務の機運も高まるかもしれない。しかし、問題は新型コロナウイルスがいつ収束するのかわからないということだ。とりわけ、今回の感染拡大ではワクチン接種が進展した後もブレークスルー感染(2回のワクチン接種後の感染)が相次いだ。ポストコロナへの移行は容易ではない。また、新型コロナウイルス以外の障壁もある。多くの死者を出した8月末~9月初の熱帯低気圧(元ハリケーン)アイダでは、ニューヨークの地下鉄が冠水するなど交通機関にも甚大な被害が出た。自然災害は年々増えており、BCP(事業継続計画)の観点からも在宅勤務の重要性は低くはならないだろう。
もっとも、在宅勤務かオフィス勤務かという二者択一に束縛される必要もないのかもしれない。8月半ばには、Facebook社はHorizon Workroomsというワークプレイスアプリの試作版を公表した。Horizon Workroomsは、簡単にいえばVR(仮想現実)を活用したバーチャルオフィスである。利用者は自分のアバターを作成し、仮想現実上の作業スペースでジェスチャーやホワイトボードを使いながらミーティングやコミュニケーションをすることができる。Horizon Workroomsについて、Facebook社が「離れていても同じ場所にいる」というコンセプトを提起しており、在宅勤務とオフィス勤務のいい所取りともいえる。
もちろん、こうしたバーチャルオフィスは試作段階であり、本格的運用には時間を要する。加えて、セキュリティや使い勝手などは今後も改善の余地があるだろう。しかし、こうしたバーチャルオフィスは、オフィス勤務、在宅勤務に次ぐ新たな選択肢を提供する可能性があり、在宅勤務全盛のウィズコロナ時代においてもイノベーションが進んでいることを評価すべきだろう。「感染収束後はオフィスへ」というコロナ禍前の状態に戻るのではなく、新たな考え方、働き方を模索してみてもよいのではないか。
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- 執筆者紹介
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経済調査部
主任研究員 矢作 大祐
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