多様性確保の効果 ~オリンピックからの示唆~

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2021年08月30日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 増田 幹郎

コロナ禍での開催で賛否両論あった東京オリンピック2020が、17日間の会期を終了した。

運動から縁遠いインドア・文科系の私であるが、今大会の新種目には目を引かれるものがあった。特に、メダルを獲得したスケートボードや自転車BMXフリースタイルはなかなか衝撃的だった。

スケートボードが階段の手すりを滑り降りたり、自転車が空中でハンドルや自転車自体を一回転させたり宙返りもする。従来型の競技に慣れていた人間としては、これらがオリンピック種目であることに驚きを感じた。10代前半のメダル獲得者や解説者のコメントの自由さを含めて、これまでのスポーツに対する概念を大きく変えたものであった。

これらをオリンピック種目に加えた狙いの一つに、従来とは異なる年代層の取り込みがある。近年様々な見方をされるオリンピック自体の存続への危機感から、若い世代の関心が高い種目を取り入れることで、新たな競技人口・観戦者数の増加を見込み、オリンピックを活性化させるという狙いは当たったと言える。時代や環境が変化していく中においては、既存の経験・発想にとらわれず様々な価値観を取り入れ、新たな時代に向けて変容していく重要性をあらためて痛感した。

企業経営においても、多様性を確保して様々な価値観や見方を取り入れることが求められて久しい。今年改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、新たに「中核人材の登用等(女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等)における多様性の確保」の記載が加わり、これに係る考え方と自主的・測定可能な目標・状況の開示を求める形となっている。

もちろん、これらの人材を形式的に増やすことが目的ではなく、前述のオリンピックの取組のように、変容・活性化に資する実質的な影響が期待されている。そのためには企業としては経営戦略に紐づいた人材戦略から検討していく必要がある。中長期的な企業価値向上の視点から企業が提供する価値は何か、そのためにどのような人材が必要で、どのような活躍を望むのか等をあらためて社内で議論して、具体的な目標を定めモニタリングをしながら取り組むことが重要となろう。

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マネジメントコンサルティング部

主任コンサルタント 増田 幹郎