サステナビリティ推進体制の最終形態
2021年08月11日
2021年6月にコーポレートガバナンス・コード(CGコード)が改訂され、サステナビリティに関する記述が拡充された。近年、サステナビリティに関心を持ち、企業戦略に組み込む企業が増えているが、CGコード改訂でその動きは一層加速しそうだ。
サステナビリティに含まれるテーマは幅広く、気候変動や生物多様性、資源循環、水といった環境に関連するもの、従業員エンゲージメント、ジェンダー平等、人権、地域コミュニティとの関係など社会に関連するものなど多岐にわたる。担当する部署も経営戦略を担う企画部門なのか、情報開示やESG投資家対応を担うIRや財務部門なのか、環境対応を担うことが多い総務やCSR部門なのか、様々な選択肢が考えられる。
最近はサステナビリティを担当する専門部署を設ける企業も多い。サステナビリティの責任者を置いたり、サステナビリティ委員会を設置する企業も増えている。日本ではまだあまり見かけないが、海外ではCSO(Chief Sustainability Officer:最高サステナビリティ責任者)という肩書もしばしば見かける。
企業が何か新しいことに取り組むとき、新しい部署、新しいCXO(※1)、新しい委員会などを作り、取り組みを加速させるというのは定石であろう。一方で、サステナビリティは経営戦略に密接に関連し、全ての部署、全役職員が関わるものだ。管理部門だけでなく、業務の現場(営業や製造など)も含め、全役職員が腹落ちした上で日々の業務に当たらなければ、絵に描いた餅で終わる。そういう観点から言えば、最終的に目指すべきは、サステナビリティの取り組みの成果により、サステナビリティが全社に浸透、各部署で対応が十分行われるようになり、サステナビリティ担当の部署や役員が不要になることだろう。
筆者のこの数年の主な仕事は、SDGsやESG、サステナビリティといったテーマについて、情報を収集・分析し、発信することであるが、いずれ企業にサステナビリティが浸透すれば、お役御免になるかもしれない。そんな来るべき日に向けて、最近はデータサイエンスの勉強を始めているところである。
(※1)何らかの最高責任者を示す“Chief XXX Officer”は、CEO:最高経営責任者、COO:最高執行責任者、CFO:最高財務責任者などが有名だが、CIO(Chief Information Officer):最高情報責任者やCRO(Chief Risk Officer):最高リスク管理責任者、CHO(Chief Health Officer):最高健康責任者など様々なものがある。
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- 執筆者紹介
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金融調査部
主席研究員 太田 珠美
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