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中国:すぐそこに迫る人口減少、遅すぎた産児制限の緩和

2021年06月10日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

中国では1953年に日本の国勢調査に相当する人口センサスが開始され、1990年以降は10年に1回実施されている。第7回人口センサスは2020年11月1日から12月10日にかけて実施され、中国国家統計局は2021年5月11日にその結果を発表した。これによると、2020年11月1日時点の中国の人口は14億1,178万人と、過去10年で7,206万人増加し、年平均増加率は0.53%であった。人口センサスが実施されない年はサンプル調査が行われ、センサスの結果を受けて、過去9年分が遡及修正される。それによると人口は2017年に14億人を超え(修正前は2019年に14億人超え)、2019年は14億1,008万人であったという。2020年の人口はわずか170万人しか増えていないことになる(遡及修正前は1,173万人の増加)。

こうした状況下で、中国共産党は5月31日に中央政治局会議を開き、「産児政策を最適化し、人口の長期的にバランスのとれた推移を促進することに関する決定」を審議し、「1組の夫婦に3人までの出産を認める」とした。しかし、これによる出生数の増加効果は極めて限定的であろう。1979年に導入された「1人っ子政策」は、2016年に完全に廃止され、「2人っ子政策」が全面的に導入されたが、出生率の上昇は2016年のみにとどまった。中国政府によると、中国の合計特殊出生率(1人の女性が生涯で産む子どもの数)は、1992年に人口置換水準(人口が減りもしなければ増えもしない)である2.1を下回り、その後も低下を続け、2010年は1.6、2020年に1.3に低下したという。厚生労働省が6月4日に発表した2020年の日本の合計特殊出生率は1.34であり、中国はこれよりも低い。

なぜ中国の合計特殊出生率はこれほどまで低下したのか?永らく続いた「1人っ子政策」の弊害は言うまでもないが、それだけではない。国家統計局が2019年に実施したアンケート調査「全国人口・家庭動態監測統計調査」(対外非公開)の結果を国家衛生健康委員会が引用したところによると、2人っ子政策導入後も敢えて第2子を望まない理由(複数回答)としては、(1)経済負担が重い(75.1%)、(2)子どもの面倒を見る人がいない(51.3%)、(3)女性の産休・育休後の給与等の待遇低下(34.3%)などが上位となっている。(1)は住宅価格高騰に伴う住宅ローン負担や教育費などが家計に重くのしかかっていること、(2)は晩婚化や核家族化により、両親に依存することが難しくなったり、安心で費用負担可能な託児所やお手伝いさんが不足していること、などが響いていよう。

2020年の出生率(人口1,000人当たりの出生数の割合)が8.52‰(パーミル:1,000分の1)と、2019年の10.41‰から大きく低下したのは、コロナ禍が影響した可能性が高い。コロナ収束や産児制限緩和により、出生率はある程度持ち直すかもしれないが、持続性には期待できない。国連の“World Population Prospects 2019”は中国の人口のピークを中位推計で2031年、低位推計で2024年としたが、前者は2020年~2030年の合計特殊出生率を1.7、後者は1.4としている。現状は低位推計より厳しく、中国の人口減少はすぐそこに迫っているとの認識が必要であろう。

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