“ステイ・アット・ホーム”から、“手洗い・マスク・スペース・新鮮な外気”に

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2021年04月08日

日本政府から新型コロナウイルス変異株流行国の一つに指定されている英国だが、1月初めからの厳格なロックダウンの再々導入とワクチン接種の進展によって、新規感染者数(7日間移動平均)は、ピークだった1月上旬の6万人近くから4月初めには4,000人を割り込む水準まで減少している。このペースダウンを受けて、英国(厳密にはイングランド)政府は3月8日以降、行動制限を徐々に緩和していくロードマップを進めている。もっとも、緩和といっても、この1ヵ月間で可能になったことは、学校再開や屋外での運動、そして限られた人数で屋外で会うこと等にすぎない。

英国政府のコロナ対策のためのスローガンも、1月初めに復活した「ステイ・アット・ホーム」(外出を控えて自宅にいる)から、3月29日には「Hands, Face, Space and Fresh Air」(手洗いをする、マスクをする、他人とスペースを取る、新鮮な外気のもとで会う)に変化している。

そして、漸く4月12日からは第2段階に移行し、必要不可欠ではない小売店や、レストラン・パブ等の屋外での営業が可能となる(4月5日に最終確認)。実際、イースター休暇中に外を歩くと、近くの公園ではサッカー(フットボール)が再開されており、また12日からの営業再開をうたう店舗の案内をよく目にした。

英国とは対照的に、新規感染者数が増加傾向のフランスやイタリア、ドイツ等大陸欧州各国では、3月後半から4月初めにかけて厳しい行動制限が再び導入され、どんよりとした気分でイースターを迎えたことだろう。例えば、フランスでは、4週間にわたって、19時から翌朝6時までの夜間外出が禁止され、日中も、通勤や生活必需品の買物、単独での運動等やむを得ない理由の外出だけに限られる。違反した場合には初回で135ユーロ(約17,500円)の罰金、違反を繰り返すと、最大3,750ユーロの罰金及び6ヵ月間の禁固刑に処せられる。大陸欧州各国は、感染状況に改善が見られない限り、現行措置を大幅に緩和することは難しいだろう。

ただ、緩和に向かっている英国でも、映画館・美術館等の教養娯楽施設やホテルの再開、屋内での飲食サービス、休暇等の海外旅行が可能になるのは5月半ば以降の予定である。3月下旬には、然るべき理由がなく海外に渡航したら罰金5,000ポンド(約75万円)を科すことが決まる等、海外からの感染波及を警戒しているのが現状である。

一連の欧州の対応からすると、日本は、人数や時間制限があるとはいえ、外食が可能で、娯楽施設だけでなく、スポーツ観戦やコンサート・演劇も制約付きながら実施される等、行動の自由度は高い。裏を返せば、欧州基準に比べると、日本で1月に再発出された緊急事態宣言(State of Emergency)は、どこも“緊急”ではなく、厳しい罰則も伴っていない、緩やかな規制・制限といえる。その背景には、日本の感染率が依然として欧州よりも大幅に低いことも挙げられるだろう。

英国政府は、5月半ば以降、渡航先のリスクに合わせて海外旅行の規制(英国帰国時の隔離要件)を設定する“信号機”システムを導入する方針であり、ワクチン接種や感染率、懸念される変異株の広がり等に基づいて判断するという。ただ、どの国が赤、黄、青(※1)になるかはデータによって決定されそして変化するため(どこから帰国するにしても出発前・到着後の検査は必要)、英国政府は、状況がはっきりするまで海外での夏休みを予約しないようにアドバイスしている。果たして、日本への渡航が何色に判定されるのか、個人的にも注目したい。

(※1)厳密にはred, amber and green(緑)の三色だが、日本での信号機の色の通称に合わせて表記した。

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近藤 智也
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政策調査部

政策調査部長 近藤 智也