20年の「学童クラブ待機児童数減少」は、共働き世帯にとって朗報か?

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2021年03月22日

  • 矢澤 朋子

前回(※1)は学童クラブの入所基準をテーマとしたが、今回は待機児童をテーマとしたい。子どもを預けたくとも預け先のない「待機児童」は、保育所のみでなく学童クラブでも問題となって久しい。共働き世帯の増加に伴い、学童クラブの待機児童数は12年以降増加傾向にあり、19年には過去最多の約1.8万人となって02年比3.1倍に増加した。

しかし、20年の学童クラブの待機児童数は、前年比で大幅な減少に転じた(下図左)。

厚生労働省の公表資料(※2)によると、学童クラブの待機児童数は20年7月1日時点で前年比2,226人減の1.6万人となり、10年の同3,417人減に次ぐ大幅減となった。10年はリーマン・ショックを契機とした世界同時不況で職を失い、意図せざる形で子どもの面倒を見られるようになった世帯が増加したり、学童クラブ数の増加が加速したりすることで、待機児童数が減少したと考えられる。20年も同様のことが起きていたのか、学童クラブ数及び共働き世帯数の推移を確認してみよう。

学童クラブ待機児童数と共働き世帯(末子の年齢4~12歳),妻の就業状態別 共働き世帯(末子の年齢4~12歳)

20年の学童クラブ数は、4年ぶりに増加幅が拡大した。政府は21年度末までの3年間で約25万人分の学童クラブの受け皿を整備する目標を掲げており(※3)、学童クラブ数の増加が加速したことは政府目標に向けて着実に進捗しているといえよう。

末子の年齢が4~12歳の共働き世帯(以下、共働き世帯とする)数は、20年4月の入所申請時期である19年10~12月期に前年比で増加した(上図右)。よって、入所申請数が減少していたとは考えづらい。しかし、コロナショックの影響により、20年4~6月期は妻が就業者である世帯数が急減し、共働き世帯数は前年比で大幅に減少した。一方、妻が休業者である世帯数はこの期間に急増した。この二つの動きが共に学童クラブの対象となる児童数を減少させ、それが待機児童数の減少につながったと考えられる。すなわち、主に妻が失業者もしくは非労働力人口に転じたことに加え、休業を余儀なくされたり、あるいは労働時間が短縮されたりしたことによっても、子が学童クラブの対象児童から外れたケースが発生したと考えられる。

「学童クラブの待機児童数減少」という事実だけを見ると、状況が改善しているようにも見える。しかし、学童クラブ数の増加が加速したにもかかわらず登録児童数の増加幅は縮小した。20年の学童クラブ登録児童数は前年比で1.2万人増加しているものの、その増加幅は19年の同+6.5万人から急激に縮小している(15~19年平均は同+7.3万人)。よって、20年の待機児童数減少はコロナショックに伴う共働き世帯の減少の影響が大きかったと考えられる。しかし、20年10~12月期の共働き世帯数は前年比プラスに転じており、学童クラブへのニーズも再び回復してこよう。今後も学童クラブ拡充が進み、「待機児童数ゼロ」の本来の目的である「子を持つ親が(安心して)希望通り働ける」環境が早急に整備されることを期待したい。

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