今年も三つ葉を…

~食品ロス削減に向けた行動変容を~

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2021年03月10日

  • マネジメントコンサルティング部 主任コンサルタント 平田 裕子

お宅はどんなお雑煮ですか?

最近はお雑煮など食べない家庭も増えていると言うが、筆者の家庭では、物心ついた時から母の郷土である讃岐の「餡餅雑煮」を食べてきた。濃厚な白味噌に丸餅がぽっかり顔を出し、丸餅の中には甘い餡子が入っている。丸餅のてっぺんには四万十の青のりをかけていただくのが恒例だ。「全てが丸く納まるように」という願いが込められている。

すまし汁に角餅という関東のお雑煮を初めて見たとき味気なく感じたが、自ら家庭を持つようになってからは、すっかりすまし汁のお雑煮が定着した。そこで発生したのが三つ葉問題である。このお雑煮の最後には三つ葉を飾るのだが、毎年この三つ葉の使い残しが野菜室に眠り、何に使おうか悩むうちに、やがて黒くなり処分することになる。今年もやってしまい、深く反省した。

日本の食品廃棄物は年間2,550万トンあり、その多くは、食品の製造、加工工程で発生する残渣、調理くずなど、もともと不可食な部分であるが、食べ残しや腐敗、期限切れなどのいわゆる「食品ロス」も年間612万トン含まれているという。日本の国内食料出荷量が約8,205万トン(※1)であることを踏まえると、廃棄量は無視できない規模であることがわかる。

食品廃棄物を家庭系と事業系に分けてみると(下図)、家庭の食品廃棄物に占める食品ロスの割合は36%と高い。生ごみのうち、3分の1が食品ロスということになるのだから、三つ葉問題は各家庭で起きているということだろう。一方で、事業者の食品ロスの割合は19%と低いように見える。しかし、業種別に見ると、我々消費者と直接接点を持つ食品小売業、外食産業でそれぞれ52%、62%と高い。これらは売れ残りや食べ残しによるものと考えられるが、その削減は事業者の努力だけでは限界があろう。日本の食品ロスの削減は、我々「消費者」の「行動」にかかっていると言えそうだ。

2000年に制定された「食品リサイクル法(※2)」は、事業者による食品廃棄物の発生抑制と再生利用を目的としている。同法のもと、事業系の食品廃棄物を、飼料や肥料、燃料などに再生利用する動きが進み、再生利用の実施率は、2000年の29%から2007年に54%へ上昇し、2008年に統計手法が変更されてからも、2008年の79%から2017年の85%へと上昇している。

一方で、発生抑制のためには「食品ロス」の削減強化が必要であると考えられ、2019年7月に公表された同法の基本方針では、事業系食品ロスを2000年度比で2030年度までに半減させる目標が設定された(※3)。さらに、続く2019年10月、国民運動を促すための「食品ロス削減推進法」が施行された。各都道府県・市町村は食料ロス削減推進計画を策定することが義務付けられている。今後、我々消費者の行動変容を促す様々な施策が展開されるだろう。消費者による食品ロス削減への取り組みは、これから広がりそうだ。

さて、「食品ロス」でスマートフォンのアプリを検索してみると、いくつもヒットする。余剰となった食材・食品と消費者をマッチングさせるものが多い。例えば、現在地周辺の余剰食品をリアルタイムに検索できたり、月額で一定料金を支払うと、登録されている店舗の余剰食品を受け取りに行くことができたりする。割引率が高いことが特徴だ。今後こうしたサービスも普及するのかもしれない。

食品が手元に届くまでには、土地、労働力、水、肥料、搬送・加工エネルギーなど、多くの地球上の資源が投入されている。廃棄にもエネルギーが必要だ。まずは使い切ること、余すことなく食べることから始めてみたいと思う。

食品廃棄物の状況(2017年度推計値)

(※1)農林水産省「令和元年度食料需給表」の国内消費仕向け量のうち、粗食料と加工用を合計したもの
(※2)食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律
(※3)2015年に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」における持続可能な開発目標(SDGs)では、「2030 年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させる」が挙げられている

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平田 裕子
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マネジメントコンサルティング部

主任コンサルタント 平田 裕子