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科学的介護に必要なデータの蓄積

2021年01月12日

政策調査部 研究員 石橋 未来

コロナ禍の中ではあるが、年末年始はゆっくりと日本酒を楽しんだ方も多いのではないだろうか。最近は飲み比べることができる飲食店や、小容量でも購入できる販売店が増えて身近になった日本酒だが、蔵元では杜氏の高齢化や後継者不足が問題のようだ。蔵元ごとの味わいを決める杜氏が減るのは残念だ。しかし、中には、杜氏を置かずに徹底したデータ管理によって高い評価を得る日本酒も生まれている。デジタル化による酒造りでも、杜氏の技に匹敵する日本酒をむしろ安定的に作ることができるという事実を示す一例だろう。

詳細なデータ分析によって、より良いサービスが期待されているのは、介護の分野も同じだ。これまで介護士の経験に基づいてサービスが提供されることが多かったが、どのような状態の時に、どのように介入することで利用者の状態が改善したのかといった細かなデータを集めて分析すれば、科学的に効果のある介護を確立できる。エビデンスに基づいた介護が行われれば、事業者や介護士の違いによるサービスのばらつきを平準化して、どこでも質の高い介護サービスが利用できるようになる。そうなれば、高齢者にとっては安心だ。

今年4月からはVISIT(monitoring & eValuation for rehabIlitation ServIces for long-Term care)とCHASE(Care, HeAlth Status & Events)の一体的な運用が開始される。VISITは、2016年度に運用を開始したデータベースで、全国の事業所から任意にリハビリテーションに係るデータを収集している。一方、CHASEは、2020年度に運用を開始したデータベースで、高齢者の状態やケアの内容、栄養や認知症に関する情報などを幅広く収集している。長期にわたって介護レセプトや要介護認定情報を悉皆的に蓄積してきた介護DB(介護保険総合データベース)にこれら2つを連結すれば、利用者の状態に最も望ましいケアを選択することができる。

課題は、収集・蓄積するデータの量だ。より多くの現場から利用者に関する様々なデータを収集できれば、その分多くのエビデンスを確立し、サービスの質の向上につなげられる。だが人手不足の現場では入力作業等の負担が重く、先にスタートしたVISITの活用も進んでいない。2018年度介護報酬改定では、VISITへデータを提出しフィードバックを受けると報酬が上乗せされる項目が新設されたが、その算定率(それを請求している事業所の割合)は1%台と低調である(※1)。

そこで、データの蓄積を図るため、2021年度介護報酬改定においては、施設系、居住系、通所系、多機能系のサービスを対象に、事業所の全ての利用者に係るデータをCHASEへ提出することを要件とする加算が新設される予定だ。詳細は今後明らかになるが、現場の負担を軽減するため、既存の介護記録ソフトとのデータ連携も検討されるという。事業者のデータ提供のハードルを下げることは重要だ。

先の日本酒の例でも、高い評価を得るまでには、分析に要する気温や発酵などのあらゆるデータを山ほど集めたという。介護においても、科学的裏付けに基づく介護を確立・普及するには、どれだけ多くのデータを収集・蓄積できるかがカギを握っている。

(※1)2019年10月のデータ。社会保障審議会介護給付費分科会(2020年11月26日)資料「自立支援・重度化防止の推進」参照。

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