コンサルティング・サービスの今年の流行
2020年12月15日
今年も残すところあと半月となった。例年、この時期には1年間の流行語が話題になるが、経営課題やコンサルティング・サービスのテーマも世相を反映して、ある種の流行があるようだ。
興味深いのは、昔は人気があったものの、やや下火になっていたテーマが、きっかけ次第で新たに注目され、流行りのテーマになることがあるということだ。
例えば、経営ビジョンと中期経営計画がそうであり、2015年頃を境に、問い合わせが多くなったことが印象に残っている。2015年に導入されたコーポレートガバナンス・コードにて、取締役会の重要な役割・責務として、「会社の目指すところ」を確立し、「戦略的な方向付けを行うこと」(※1)が謳われたことが一つの契機になり、経営ビジョンと中期経営計画のあり方について、見直しの機運が高まったのであろう。
では、今年は何が流行ったか。「新しい働き方」「デジタル・トランスフォーメーション」のような急速に注目が高まったテーマもさることながら、意外と問い合わせが多かったのは、「持株会社体制」への移行支援についてである。
既に公表されている事例に限っても、経営統合の手段として持株会社体制を採用するケースもあれば、単一の業態で攻めていた企業が新しい業態を開発する目的で持株会社体制への移行を表明するケースもあった。また、国内屈指の大企業が持株会社体制への移行を表明したことについて、そこに「強烈な危機感」を読み取る報道もあった。
いずれにしても、厳しい外部環境だからこそ、大規模な変革を意図し、経営体制の見直しに足を踏み出す企業が増えたのだろう。そのように考えると、「新しい働き方」「デジタル・トランスフォーメーション」と「持株会社」が並んでいることに違和感がないようにも見えてくる。昔からあるコンサルティング・テーマも、環境の変化に応じて、新しい意味を獲得しているものと言えよう。
10年後に振り返った時に、あの1年間の苦闘があったからこそ今がある、と言えるようになることを心より祈りたい。
(※1)金融庁・東京証券取引所 『コーポレートガバナンス・コード 原案 ~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~』(コーポレートガバナンス・コードの策定に関する有識者会議、2015 年3月5日)原則4
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マネジメントコンサルティング部
主席コンサルタント 吉村 浩志