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事業ポートフォリオ経営で一番大切なこと

~ 会社の未来の姿は描けていますか ~

2020年11月25日

経営コンサルティング第一部 主席コンサルタント 弘中 秀之

企業の持続的な成長を実現するためには、貴重な経営資源をコア事業の強化や将来への成長投資に集中させる必要がある。そのためには事業ポートフォリオを見直し、事業再編を実行することが急務な課題となるが、実際には事業の切り出しは十分に行われていない。

事業の新陳代謝が進まないこのような現状を踏まえ、経済産業省より、事業再編を促すためのガイドライン「事業再編実務指針 ~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」が2020年7月31日に公表された(※1)。

この中で、事業ポートフォリオの見直しが進まない理由や課題が多数例示されている。
例えば、取締役会にて事業ポートフォリオに関する基本方針が定められていないことや、事業ポートフォリオ経営を行う仕組みや財務的な規律付けを含む基準がないことが挙げられている。このため、事業ポートフォリオに関し取締役会で議論されることもなく、経営の監督機能が十分に働かず、収益性の低い事業が温存されることになる。
また、資本効率性ではなく売上高や利益額を重視する経営者の意識や報酬体系、社外取締役の役割や関与の仕方等の課題も挙げられている。
ガイドラインには、こうした課題とともにその対応方法が示されており、企業が今後、事業ポートフォリオ経営を推進していく際の道標となるであろう。

しかし、それでも、過去何十年も会社を支えてきた事業を切り出す場合の決断は簡単ではない。収益性は低いが一定の売上比率を占めている事業を切り出す場合等においては、企業規模や売上規模が縮小することへの抵抗感は相当大きいと思われる。

そこで一番大切になることが、その事業を切り出した後に描かれる会社の未来の姿である。事業ポートフォリオ経営を実践し、どのような事業にシフトしていくかは会社の命運を握る。
過去会社を支えてきた事業を切り出し、検証が不十分な新分野に投資するのは博打といえる。常日頃から、会社の目指すべき方向性を見定め、シフトすべき将来性のある事業や領域を検討しておくことが重要になる。
そうすることで初めて事業の切り出しと注力すべき事業に関する議論の歯車がかみ合い、事業ポートフォリオ経営が動き始める。

日本では、少子高齢化が進み、人口に依存する多くの市場が縮小する。さらに新型コロナウイルスの影響もあり、先行き不透明感は増している。しかし、このような時代であるからこそ、現在の延長線上にある将来の自社の姿を見極め、目指すべき姿を模索する必要がある。皆様の会社では、会社の未来の姿に関し、どのような議論が行われていますか?

【参考文献】
「事業再編実務指針とポートフォリオマネジメント(上)」商事法務No.2238 2020.8.5
「事業再編実務指針とポートフォリオマネジメント(下)」商事法務No.2239 2020.8.25
神田秀樹学習院大学教授、坂本里和前経済産業省経済産業政策局産業組織課長、田村俊夫一橋大学教授、
日戸興史オムロン取締役執行役員専務CFO、武井一浩弁護士
「事業再編実務指針 ~事業ポートフォリオと組織の変革に向けて~」の解説 商事法務No.2238 2020.8.5
疋田正彦経済産業省経済産業政策局産業組織課課長補佐、白岩直樹同課長補佐、香川隼人同課長補佐、
行廣侑真同総括係長

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弘中 秀之

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経営コンサルティング第一部
主席コンサルタント 弘中 秀之