電子図書館利用のススメ

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2020年11月11日

  • 政策調査部 足立 雅準

3年ごとに15歳児を対象に実施されているOECD学習到達度調査(PISA)の直近の結果を見ると、日本はOECD加盟国(37か国)中では数学的リテラシー1位、科学的リテラシー2位といずれも世界トップレベルだ。ところが、読解力は11位と振るわない。読解力の順位低迷に対し、気になるのは読書量が減っている人が増加傾向にあることだ。学研総合研究所「小学生白書」2019によると、読書量は減少し、減っている人が増加傾向にあるとされる。

一方で、コロナの影響で若者の「読書量が増えた」とする調査結果(日本財団「18歳意識調査『第30回 –読む・書く–』詳細版」(2020年10月30日))があり、ウィズコロナの時代に読書量増加という望ましい傾向を促すために、電子図書館をお勧めしたい。電子図書館には様々な定義があるようだが、ここでは、インターネット上で電子書籍の貸出を行う仕組みのこととする。図書館に出向かなくても自宅PCからアクセス可能なため、ソーシャルディスタンスをキープでき、衛生的にもノーリスクな電子書籍は、ウィズコロナの時代にはうってつけである。

実際に都内の公共図書館が運営する電子図書館を利用してみた。借りたい本を検索して見つけると、貸出可能な本は瞬時に借りることができる。ネットショッピングと同じような感覚である。本によっては試し読みもでき、音声で読み上げてくれるものまである。スマホで読む場合は、小さい画面での操作に慣れが必要だが、紙の本とは違い文字を拡大することも可能だ。本を広げにくい通勤や通学途中の電車内などで威力を発揮しそうである。じっくり読みたくなったら、電車で読んでいた続きを自宅PCから読むこともできる。そして返却もワンクリック。ネット回線が利用可能であれば、いつでもどこでも利用することができ、とにかく便利だ。

課題はある。図書館予算の確保や、電子書籍購入費用の会計基準の明確化(備品購入ではなくサービス利用となるため)、貸出可能な電子書籍数の絶対的な不足である。どれも一筋縄ではいかないが、「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」の活用事例の一つである“図書館パワーアップ事業”にぜひ期待したい。電子書籍数を充実させるために、定期的に電子書籍数ランキングを公表することによって図書館間の競争を刺激することも検討してもらいたい。

図書館利用率が世界1位のフィンランドは、PISAの読解力ランキングがOECD加盟国中3位である。読解力を高める究極的な目的は幸福な人生を送ることだと思われるが、フィンランドは世界幸福度ランキングが3年連続(2018~2020年)1位である。幸福度の構成要素の一つである「人生選択の自由度」が、読書から得られる見識によって増しているのではないだろうか。ウィズコロナの時代に人生を豊かにする手段の一つが電子図書館であり、積極的に取り組むべき施策といえそうである。

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