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世界一長いロックダウン~一部新興国のリスク増大に要注意

2020年11月09日

経済調査部 エコノミスト 増川 智咲

「世界一長いロックダウン」-アルゼンチンで実施されている外出禁止措置は、7カ月を超え、国内メディアはこう揶揄する。同国では、3月20日に外出禁止措置が発表されて以降、14回に亘って延長が繰り返されてきた。最新の報道によると、11月8日までの延長が発表されている(10月23日発表)。ロックダウン開始当初は、一部の職業を除いたほとんどすべての経済活動は止められ、一般市民の外出は買い物に限定された。その後、ロックダウンの延長を繰り返す中で、行動制限の内容を緩和する地域が指定されるなど、その「厳格度」は若干緩和されてはいるが、「ロックダウンの解除」予定は本コラム執筆時点(11月2日)でアナウンスされていない。これにより、政府に対する国民の不満が高まり、デモが生じたとの報道もある(※1) 。債務再編で揺れるアルゼンチンでは、消費者物価上昇率が前年比40%を超える高インフレを記録しており、市民生活への影響は殊更に大きいのだろう。アルゼンチンでは、これだけ長期の行動制限を行ったにもかかわらず、新型コロナウイルス新規感染者数の増加が落ち着いたのは10月後半を過ぎたころで、それまで増加の一途をたどった。100万人あたりの感染者数を見ると、感染の急拡大が顕著であったインドやブラジルの規模を大きく超えている(図表)。

IMFが10月に発表した「地域経済報告」では、なぜ中南米で感染が広がり、死者数が増加したのかを分析している。これによるとガバナンスの問題、家族の規模の大きさ、インフォーマルセクターの大きさ、低所得者層の大きさ、医療整備の遅れ、「自粛疲れ」などの要素が複合的に影響して、ロックダウンの効果が薄れたという。前述のアルゼンチンがその典型例ではあるが、これは中南米に限らず、人口規模が大きいインドなどでも見られた。

また、ロックダウンによって感染抑止に成功した国々も含め、新興国の多くの国では、ロックダウンで経済活動が止まったことがきっかけとなり、失業者の増加や格差拡大などの社会の歪みが拡大している。これらが社会不安を高め、政治リスクにつながった場合、市場の動揺を誘い、資本流出・為替減価圧力を引き起こす可能性も否定できない。ロックダウンのさらなる長期化、あるいは再実施は、新興国が抱えるこうしたリスクを一段と増大させると危惧される。

100万人当たり新規感染者数(平滑化値)

(※1)JETROビジネス短信「外出禁止措置を8月30日まで延長、政府への評価低下」2020年8月20日

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