70歳まで働くことを考えていますか?
2020年10月28日
2021年4月から、改正高年齢者雇用安定法が施行される。この法律では高年齢者が活躍できる環境の整備を目的とし、企業に社員を70歳まで働けるようにするための措置を設けることを努力義務として課す。企業が提示する選択肢には、定年廃止や定年延長、再雇用などのほか、フリーランス契約や起業支援なども含まれる。まだ「努力義務」ではあるが、「70歳まで働ける社会」を作るための基盤作りが進んでいく。
では、労働者の側の意識はどうだろう。次の図表は大和総研が2020年1月に行ったアンケートで、学生を除く20~59歳の男女に、自分が70歳になったときの働き方の予想を聞いた結果である。どの性別・年代でも3割ほどの人は70歳になったときの働き方は「全く分からない」と答えていたが、70歳になっても週2日以上働くことを予想している人も少なくなかった。
男性では、30代~50代の4割弱が週2日以上働くことを予想している。これが20代では25%に留まっているが、社会人になったばかりでは、まだ高齢になっても働くことのイメージができていないのだろうか。
女性は、週2日以上働くことを予想している人が20代・30代・50代では2割前後だが、40代では33%に跳ね上がっている。現在の40代はいわゆる就職氷河期世代に相当し、雇用や所得が不安定な人の割合が前後の世代と比べて高い。40代の女性は老後の資金への不安から、70歳になっても働くことを予想している人が多いのかもしれない。
70歳まで働き続けるとしても、今勤めている企業・職種のままとは限らない。新型コロナウイルスの感染拡大は産業構造を大きく変える契機となりつつある。長期の低迷や衰退が見込まれる産業では希望退職の募集や整理解雇が始まっている。たとえ当面の雇用が守られたとしても、70歳まで働くことを前提とすると、40歳ならまだ30年間、50歳でもまだ20年間、「働く期間」が残っている計算になる。それだけの長期間、低迷や衰退が見込まれる産業で働きたいかと問われると、職種を大きく変える転職に決心がつくかもしれない。
「70歳まで働ける社会」が作られていく過程では、労働者の働く意識も大きく変わってくるだろう。
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金融調査部
主任研究員 是枝 俊悟