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「withコロナ」下の観光産業はどこから立ち上がるのか

2020年05月27日

政策調査部 主任研究員 神尾 篤史

2020年3月期の上場企業の決算発表が大体終了した。通例では決算発表時に今年度(2021年3月期)の業績予想も公表されるが、今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で業績予想を現時点で未定とする上場企業が異例の多さになっている。

新型コロナウイルスがもたらした事態によって株価が大きく下落した3月中旬からこれまでに株価が上昇したのは、悪影響が軽微だったスーパーマーケットの銘柄や、むしろ事業拡大への追い風が吹いたテレワーク、遠隔診療、ハンドソープなど衛生商品関連銘柄などにとどまる。「密」を伴うシチュエーションや人の移動を伴ってしまう企業は営業自粛を余儀なくされ、業績が厳しくなり、株価は下落した。

しかし、そういった企業も全都道府県の非常事態宣言が解除されたことで、「新しい生活様式」に基づいて営業を本格的に再開していくだろう。そうすれば、人々の行動が明らかになり、需要動向も見えてくる。そういった業種に対する株式市場の評価が本格的に変わるのはこれからだろう。

人々の大規模な移動を伴う観光産業も感染拡大に最大限配慮しながら営業を再開していくことが期待される。非常事態宣言中、自由に旅行できるということは素晴らしいことであると感じた人は多いのではないか。筆者もその一人である。このような想いは裏を返せば、今後の旅行需要の高まりを予見させるものでもある。また、令和2年度の補正予算で「Go To キャンペーン事業」が措置されており、宿泊や外食などにクーポンが付与されることも旅行需要の拡大を後押しするだろうと考えられる。

4月27日~29日を調査日として全国の一般生活者を対象とした「新型コロナウイルス感染症収束後の旅行・観光に関する意識調査 調査報告書」(熊本県観光協会連絡会議、2020年5月4日)によると、「外出自粛生活が続くことで、旅行やお出かけに対する消費者の意欲は高まっている」という。また、「当面は近郊への旅行・お出かけ市場が主戦場」「テーマパークや都市部など密集が想定される場所は避けられ、自然や解放感のある場所が好まれる方向へ」「旅行など余暇・レジャーへの出費には厳しい時代に」といった大きな変化の兆しがあるという。そうだとすれば、低予算で自然豊かな観光地への近距離国内旅行が選好されそうである。また、同調査では近隣エリアへの旅行の再開時期で最も多かった回答が「外出自粛要請の解除後」となっている。

東京在住の消費者であれば、「密」を避けるために自動車を利用して、個人や家族で北関東の温泉、房総・湘南・伊豆の海や山に向かうことが想定されよう。そうだとすれば、観光産業の中でも最初に立ち上がるのは、都市部にある宿泊施設よりは、大都市近郊の宿泊施設であり、テーマパークよりは温泉やアウトドアを楽しめる場所の可能性が高そうである。また、海や山が好まれるのならば、施設利用料といった直接的な消費だけではなく、アウトドア用品の購入といった間接的な消費も増えるだろう。

株式市場では「withコロナ」や「ポストコロナ」における観光銘柄に対する評価は今のところ厳しい。しかし、人々の需要の高まりが表出し、コロナの影響を配慮しながら稼ぐ仕組みを企業が見出せば、観光銘柄の評価は変わってくるに違いない。

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神尾 篤史

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