「ウィズコロナ」時代に親に求められるアシスタントティーチャーの役割

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2020年05月26日

全世界で新型コロナウイルス感染者数の最も多い米国、その中で一番感染者数が多いニューヨーク州(5月20日現在、感染者数354,370名(※1) 、死者数22,976名)では、3月22日からロックダウン(必要不可欠なサービスを提供するビジネス以外は閉鎖)が開始された。ニューヨーク州の公立校(日本でいう幼稚園の年長も含まれる)はその1週間前から休校になり、今学年度末(2020年6月)まで休校が継続し、遠隔授業が実施されることとなった。生徒は夏休みが始まるまでの約3カ月以上にわたり、自宅等で遠隔授業を受けている。また、リモートでのサマースクールが実施されることも発表されている。

ニューヨーク州で学校に通う子を持つ親は、安全面さえ確保されるのであれば、できるだけ早期の再開を望む一方、新学期の9月以降も果たして学校に行けるのか、非常に気になるところであろう。感染者数が比較的少ないニューヨーク州の一部の地域では州が定めた一定の基準(入院患者数、死者数、病院の空ベッド数、検査人数、追跡要員数)を満たす場合、経済・社会活動は、地域別・産業別に4段階に時期を分けて再開できることになっている。5月15日より、一部地域での経済活動の再開が許可されたが、学校などの教育関連業は最後の第4段階で再開される予定となっている。

ところで、遠隔授業というと、どのような形態を想像されるだろうか。学校により異なると思われるが、筆者が住む地域の学校では、生徒は通学時と同様の授業をPCやタブレットを通じて受けているわけではない。生徒は学校から求められる課題をPCやタブレットを使ってほぼ自学自習で提出することに多くの時間を費やしている。課題のポイント等の授業や体育、音楽の授業もあるものの、時間は長くても1日合計1時間程度だ。多くの生徒はおそらく初めて個人のEmailアドレスを取得し、科目ごとに先生から毎日送られてくるメールを見て、課題に取り組む。小学校中高学年の生徒たちはPCやタブレットの操作に慣れつつあるが、回線が繋がらなかったり、システムトラブルが発生したりする。そうすると親のサポートは不可欠だ。低学年の生徒や幼稚園児なら、そもそも親のサポートがなければログインもできない。授業に関する質問はメールで問い合わせることも可能だが、学校にいる時ほど気軽に質問はできないので、必然的に在宅している親が質問を受けることになる。PCの操作等も含め親にはアシスタントティーチャーの役割が求められるのである。
ニューヨーク市では、学校再開にあたり実施する安全策の一つとして、クラスでのソーシャルディスタンスを確保すべく、クラスに実際に出席する人数を半分にし、残りの半分はオンラインでの授業を継続するといった案も検討されているようだ。こうなると、今後もオンライン授業は一定程度が続くので、親のアシスタントティーチャーの役割も引き続き必要になる。
「ウィズコロナ」時代の始まりなどともいわれ、もはや従来の学校での授業形態に戻らない可能性がある中で、家庭教師兼シッターのサービス利用の選択肢もある一方、親はオフィスへ出社が可能になったとしても、アシスタントティーチャーの役割を果たすべく在宅勤務を継続することになるかもしれない。生徒たちが最も安心で安全な方法で授業を受けられるよう学校と親、親と職場が相互に理解・協力することが以前にも増して求められるのではないだろうか。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 鳥毛 拓馬