「デザイン経営」って何だろう?

- なぜ、デザイン経営の実践により企業価値が高まるのか -

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2019年12月18日

  • マネジメントコンサルティング部 主席コンサルタント 弘中 秀之

最近、「デザイン経営」という言葉をよく聞くようになってきた。

重要なことは、ここで使われている「デザイン」は、形や色などの意匠を表す狭義の「デザイン」を意味しないということだ。

2018年5月23日には、経済産業省と特許庁から 『「デザイン経営」宣言』(※1)が公表された。この中で、「デザイン」とは、「社会のニーズを利用者視点で見極め、新しい価値に結びつけること」であり、「デザインが介在してはじめてイノベーションが実現する」と説明している。

また、「デザイン経営」の効果は、「ブランド力向上+イノベーション力向上」、すなわち、「企業競争力の向上」であるとしている。

デザイン経営に関する書籍やWEB上の記事も増えてきている。これらを読んでみると、著者や有識者によって「デザイン経営」の捉え方は様々であり、これを自ら実践していくことの難しさも感じられる。

しかし、今、「経営」に「デザイン」が求められていることは理解できる。

例えば、以下のように企業経営にあてはめると分かりやすいであろう。

  • 企業経営を、理念・ビジョンから、経営戦略、事業戦略、製品・サービス戦略まで一貫して“デザイン”する
  • 提供するサービスを、顧客の購入前、購入時、購入後の利用、問合せ、サービス継続、周辺サービスの購入などの顧客体験(カスタマージャーニー)に基づき“デザイン”する
  • 製造する製品のライフサイクル(原材料調達、製造、出荷、販売、購入後の利用、アフターサービス、廃棄など)を、顧客視点から“デザイン”する
     

よく考えるとこれらを実行することは当たり前のことだ。では、なぜデザイン経営が注目されるようになってきたのか。それは、この当たり前のことを徹底し、高次元で実践している会社がブランド価値を高め、イノベーションを実現し、業績を伸ばしているからであろう。

デザイン経営の指南役として多くの企業に携わっている株式会社エムテド代表取締役の田子學氏は、デザイン経営の本質を著書『突き抜けるデザインマネジメント』(※2)の中で次のように述べている。

“デザインとは突き詰めると「社会的課題を産業で解決する仕組みづくり」と言える。それらを一気通貫してマネジメントするのが「デザインマネジメント」だ”

デザイン経営の効果をもう少し具体的に考えると、例えば、「競合他社と差異化できずに、価格競争に巻き込まれ苦しんでいた企業が、社会的課題解決を起点に自社の経営をデザインし直すことで、新たな市場ポジションを獲得し、価格競争から脱却する」ようなケースが想定できる。

経営におけるデザインの重要性を認識していない経営者は少ないと思われる。自社の未来を描くために、現在のビジネスモデルが高次元でデザインされているか、これから年末年始を迎えるにあたり改めて考えてみるのも良いのではないか。

(※2)『突き抜けるデザインマネジメント』
(慶應義塾大学 大学院 SDM 特別招聘教授/株式会社エムテド代表取締役 田子學、田子裕子共著、日経BP、2019年)

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弘中 秀之
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