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中国:民営企業の重要性を示す5、6、7、8、9と、苦境を表す2

2019年12月12日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

民営企業の重要性を示す5、6、7、8、9という数字がある。これは習近平総書記が2018年11月1日に主宰した民営企業座談会で「民営経済は税収の50%以上、国内総生産の60%以上、科学イノベーション成果の70%以上、都市就業の80%以上、企業数の90%以上を占める」と発言したことに由来する。

民営企業には「2」という数字もある。これは企業債務残高に占める民営企業の割合(約20%)であり、企業の資金調達が国有企業に集中していることを示している。金融リスクの低減を目指したデレバレッジ(負債率引き下げ)では、民営企業の資金調達の命綱であった委託貸出や信託貸出が純減(資金回収超過)となり、2018年夏以降の金融緩和でも恩恵は国有企業に集中し、民営企業は蚊帳の外に置かれた。

2019年の中国の実質GDP成長率は前年比6.1%程度と、2018年の同6.6%から大きく低下すると推測される。米中摩擦の長期化・深刻化による輸出低迷や製造業投資の伸び悩みが主因であるが、所有形態別には、GDPの60%以上を占める民営企業が資金調達難から不振を余儀なくされていることがより大きな要因であろう。

実は2018年11月の民営企業座談会では、郭樹清・中国銀行保険監督管理委員会主席が「1、2、5」という数字を示した。具体的には、「貸出、債券、株式、理財商品、信託、保険などの金融資源を動員し、民営企業の資金調達ルートを広げ、調達コストを引き下げる。銀行貸出について、企業向け新規貸出のうち民営企業向けの割合は、大手行は3分の1を、中小行は3分の2を下回らず、3年後には銀行業全体の企業向け新規貸出に占める民営企業向けの割合は50%を下回らないようにする」としたのである。残念ながら1年以上が経過しても民営企業の資金調達に明確な改善は見られない。既述した委託貸出、信託貸出の純減が続いているほか、ネット金融の監督管理強化の一環でP2Pプラットフォーム(ネット上で企業や個人から高利で資金を集め、中小・零細企業や個人に融資をする)の経営破綻が相次ぐなど、民営企業の資金調達はむしろ厳しさを増している。

こうした中で、今後、民営企業の資金調達を支援するにはどうしたらよいのか?難題ではあるが、方法がないわけではない。差し当たっては、民営企業向けの銀行貸出を増やす方法がある。大手行の預金準備率は2019年11月末時点で13.0%と高水準であり、良し悪しはともかく、引き下げで解凍される貸出余力の相当部分を民営企業に振り向けることを中国人民銀行が窓口指導することは可能である。同時に窓口指導がきちんと実行されているかの検証も不可欠であろう。資本市場の活用の余地も大きい。2019年7月22日にスタートした上海株式市場の「科創板(ボード)」は、文字通りハイテク・イノベーション型の民営企業を中心とした資金調達の場である。企業債券の分野でもリスクをある程度分散できる中小企業集合債の発行を増やすことも考え得よう。

2020年の中国経済の行方を占うキーワードのひとつは、民営企業のテコ入れが奏功するか否かとなりそうだ。

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経済調査部
主席研究員 齋藤 尚登