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“裸の大統領”トランプと戦うのは誰か

2019年11月11日

ロンドンリサーチセンター シニアエコノミスト(LDN駐在) 近藤 智也

2020年11月3日の米国大統領選挙の投票日まで一年を切った。米国の大統領選挙は長丁場であることはよく知られており、各党の大統領候補は、年明け2月から始まる各州の予備選挙・党員集会を経て、夏の全国党大会で正式に指名される。人気(支持)やお金が集まらない候補者から順次脱落していく、いわば、サバイバルレースを勝ち抜かなければならない。

当然ながら、党内の争いに時間をかけすぎれば、しこりは残り、11月の本選まで十分な体力(資金)が持たない恐れも出てこよう。その点、再選を目指す現職大統領は体力を温存できる分、一般的に有利だ。実際、トランプ大統領が所属する共和党においては、トランプ大統領が6月に再選出馬を表明する一方、彼への党内支持率が高いために、対抗馬らしき者は現れていない。したがって、世界の関心事は、トランプ大統領の対戦相手が誰になり、彼あるいは彼女はトランプに勝てるのかに移っているといえよう。

民主党では、当初20名を超える者が立候補を表明し、現時点(2019年11月6日)でも17名が戦線にとどまっている。抜きんでる候補者はおらず、15~30%程度の支持を集める有力候補者が70歳代の3名、残りは支持率一桁台と団子状態である。だが、トランプ大統領の支持率が依然として40%台前半にとどまり、不支持率が大きく上回っている現状に鑑みると、民主党が勝つチャンスはあるといえよう。実際、世論調査をみると、有力候補3名はトランプとのガチンコ対決では、支持率で勝っているケースが多い。但し、2016年の場合、トランプ大統領は得票数において民主党のクリントン候補を下回ったにもかかわらず、当選した実績があり、要は接戦州で一票でも多く獲得できるかにかかっている。

では、民主党の各候補者の主張はいかなるものか。様々な見方はあろうが、共通する主張の一つが、トランプ大統領のレガシーを否定することである。彼がオバマ前大統領の一連のレガシーをひっくり返したように。まず、2017年末に成立した大型の法人税減税は反トランプ改革のターゲットになるだろう。そして、よりリベラルな候補は、GAFAと呼ばれる巨大IT企業の分割まで視野に入れる。

一方、トランプ大統領と似通った主張もみられ、結果的に対立の焦点がぼやける場面も出てこよう。その典型が米国第一主義である。民主党候補者らはトランプ大統領の通商政策をこぞって批判するものの、国内を保護しようとする姿勢に大きな違いはない。徴収した資金をどこにばらまくか(配分するか)という点で、大企業・富裕層よりも(むしろ彼らは徴収される対象)、中低所得層を重視するのが民主党である。もっとも、2016年にトランプ大統領を当選に導いた原動力が、ラストベルトと呼ばれる地帯の白人を中心とした中低所得層だった。だが、40日間に及んだGMのストライキに象徴されるように、労働者の待遇面に関する不満は根強く、トランプ大統領に裏切られたと感じる分だけ、今度は敵に回る可能性がある。

さて、2001年に発生した同時多発テロ事件直前から米国経済の分析に携わり始めて20年近くたつが、ついぞ、米国内で大統領選挙を体感することはかなわなかった。来年の米国大統領選挙は、トランプ大統領に概ね批判的な欧州から観察することになる。

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近藤 智也

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ロンドンリサーチセンター
シニアエコノミスト(LDN駐在) 近藤 智也