サマリー
◆トランプ大統領は、8月1日より適用予定の新たな関税率を公表した。7月9日より適用予定だった上乗せ税率の適用期限を実質的に3週間強延長したともいえるが、貿易相手国・地域との交渉が難航すれば、実際に新たな関税率が課される恐れがある。新たな関税率が実施されれば、実効関税率は現時点の8%強から20%強まで上昇することが見込まれ、景気・インフレ率への悪影響は大きくなることが想定される。
◆そもそも、トランプ大統領が関税措置を激化させられた背景には、市場が落ち着いており、足元の景気が底堅いことや、7月4日に成立したトランプ減税2.0による景気下支え期待があるだろう。他方で、追加関税措置に対して、2024年の大統領選挙でトランプ大統領に投票した支持者の不満は根強い。そして、世論の不満に呼応し、共和党議員も懸念を募らせている。
◆トランプ大統領にとって、2026年度の予算策定やFRBの幹部人事といった重要な議題が残り、共和党議員との関係性が引き続き重要だ。トランプ大統領は追加関税措置に対する懸念を解消する必要がある。2026年11月の中間選挙の候補者選定が今年秋頃より始まることから、共和党議員は世論を重視しやすい。とりわけ、タウンホール・ミーティングなどが開催される8月にかけて、共和党議員がトランプ大統領に対して追加関税措置の再調整に向けた圧力を強めると考えられる。
◆また、現時点で景気が落ち着きを見せているとはいえ、既存の追加関税措置によって、インフレ率には再加速の兆しが見られる。インフレ率が高止まりすれば、家計の実質的な購買力は抑制され、個人消費、ひいては景気を下押しする恐れがあるとともに、FRBによる利下げも遠のく。トランプ減税2.0に加え、債務上限問題の解決によって、国債需給が悪化するリスクもある。こうしたインフレ再加速や財政悪化リスクなどによって金利上昇が顕著になれば、追加関税措置に対する逆風は強まり、トランプ大統領にマイルド化を促すことが想定される。政治・経済・市場動向を踏まえれば、トランプ政権は新たな関税率を一時的に適用するにしても、長い期間にわたっての維持はしづらく、その不透明感のピークは7-8月となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
非農業部門雇用者数は前月差+11.5万人
2026年4月米雇用統計:強弱まちまちもFRBの様子見には十分な結果
2026年05月11日
-
米GDP 前期比年率+2.0%と加速
2026年1-3月期米GDP:AI関連投資がけん引
2026年05月01日
-
FOMC 3会合連続で金利据え置きを決定
パウエル議長の任期満了、次期議長下での注目点は?
2026年04月30日
最新のレポート・コラム
-
中国:自動車産業の内巻、国外では強みに
新エネルギー車(NEV)の急発展と自動車輸出の急増
2026年05月18日
-
上場オーナー企業と公開買付制度・大量保有報告制度の見直し
2026年5月1日に大量保有報告書等の提出義務が発生する場合も
2026年05月15日
-
デジタルアイデンティティ・デジタルクレデンシャルをめぐる取組みと実装技術の論点整理(第1部)
デジタルアイデンティティの基本像と、EUDIウォレットにみる制度化・実装動向
2026年05月14日
-
熊谷亮丸の経済・金融 Foresight 何故、わが国では潜在成長率が低迷しているのか?
高市政権は成長戦略を強化する方針だが、①労働、②資本、③TFP(全要素生産性)という3つの要素をバランス良く底上げする必要
2026年05月13日
-
まちづくりと書いてチームビルディングと読む
2026年05月18日
よく読まれているリサーチレポート
-
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
-
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
-
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
-
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
-
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日
超富裕層の株式譲渡所得への税率はミニマムタックス込みで最高35.63%に
2026年度税制改正大綱解説(3)富裕層課税(ミニマムタックス)
2026年02月09日
いまさら人には聞けない 大量保有報告(5%ルール)のQ&A 【改訂版】
2024年金商法等改正法(2026年5月1日適用開始)を反映
2026年04月03日
検討進むガバナンス・コード改訂:2月案と4月案の相違点は
「解釈指針」は原則と一体という記述は削除。現預金への注目を避ける修文。
2026年04月10日
企業が意識すべきCGコード改訂案のインプリケーション
「金融資産」「実物資産」がコードに入った意味
2026年04月16日
日本経済見通し(2026年4月)
中東情勢緊迫による景気下振れリスク上昇で4月利上げは見送りか
2026年04月21日

