サマリー
◆米国のトランプ大統領は7月12日、EUに対して8月1日から30%の追加関税を課すと表明した。トランプ大統領はEUに対しては5月末に50%の追加関税を課すと述べていたこともあり、30%の追加関税率は大きなサプライズではなかった。ただし、税率が引き上げられる以上、ユーロ圏経済にとってネガティブな材料であることに間違いはなく、先行きを楽観視するべきではない。
◆また、ユーロ圏の対米輸出の主力製品である医薬品に対する追加関税の詳細についても7月末に公表されるとみられるが、トランプ大統領は200%まで税率を引き上げると述べており、実際の決定内容が大きな注目点となる。仮に200%という極めて高い関税率が現実のものとなれば、自動車関税や相互関税以上にユーロ圏経済に及ぼす影響は大きくなるとみられる。
◆ユーロ圏の輸出環境を巡っては、追加関税に加えて、ユーロ高が輸出の拡大を阻害するリスクも高まっている点にも注意が必要である。ユーロの対ドルレートは年初から10%強上昇しており、ユーロ圏の輸出の価格競争力を低下させる要因になっている。ユーロ高についてはECB当局者の一部からも懸念が示されており、7月ECB理事会後の会見では、ユーロ高による景気やインフレ率の下振れリスクに言及されるか否かが注目点となる。
◆英国では福祉予算の削減が見送られたことで、再び財政への注目度が高まった。財政規律維持のためには、追加の増税が不可避と考えられるものの、労働党政権がこれまで実行した増税が高インフレ、労働市場悪化の一因になっていることを踏まえると、追加増税は容易ではない。限られた選択肢の中で労働党政権がどうバランスを取っていくのか、財政を巡る議論の進展を注視していく必要がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
4-6月期ユーロ圏GDP 原油高でも底堅く成長
実質GDP成長率は前期比+0.4%と市場予想から上振れ
2026年07月31日
-
欧州経済見通し 中東情勢に一喜一憂
ECBの追加利上げの可能性が高まる/英国ではバーナム政権が始動
2026年07月28日
-
欧州における防衛費増加の進捗と展望
~競争力強化との両立に向けた課題~『大和総研調査季報』2026年夏季号(Vol.63)掲載
2026年07月27日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

