医師のジェネリック使用割合はどうして低い?
2019年10月09日
医療費の増加が社会的課題となる中、全国的に取り組みが進んでいるのが後発医薬品(ジェネリック)の使用促進だ。厚生労働省の推計によると、先発医薬品と同等の効果・効能があり、先発医薬品に比べて安価なジェネリックの使用は、2017年度で1.3兆円の医療費抑制効果があったという。政府は2015年9月で56%だったジェネリック使用割合を2020年9月までに80%以上へ引き上げる目標を掲げており、2018年9月で73%となった。
これに関連して、各保険者のジェネリック使用割合を地域別・制度別に集計したデータは以前から公表されていたが、2019年3月からは個別の保険者データも公表されるようになった。政府は約3,500の保険者のデータを定期的に公表することで、課題の所在を分かりやすくし、改善に向けた取り組みを保険者に促すねらいがある。
実際に、2019年9月に厚生労働省が公表した同年3月分の保険者別ジェネリック使用割合を見ると、いくつかの特徴を指摘できる。例えば、都道府県別に見た地域差が大きいことは以前から指摘されていたが、市町村レベルの地域差は更に大きい。国民健康保険(国保)において、都道府県別に見ると65~85%だが、市町村別に見ると40~94%に地域差が拡大する。ジェネリックの使用が遅れている県でも使用割合の高い自治体がある。
他制度に比べてジェネリックの使用が進んでいない国保組合では、とりわけ医師国保組合で使用割合が低い。国保組合の保険者平均は69%だったが、医師国保組合では平均61%と、歯科医師国保組合の70%や薬剤師国保組合の75%を下回る。162ある国保組合のうち20の保険者では60%未満だが、その全てが医師国保組合である。加入者の多くが薬剤の専門知識を持つ医師国保組合でなぜジェネリックがあまり使用されていないのか、実態を解明する必要がありそうだ。
健康保険組合(健保)に注目すると、製薬関連企業の健保でジェネリック使用割合が低い傾向が見られる。1,390ある健保の平均は76%であり、70%未満の健保数は73にとどまるが、その3分の1ほどは製薬関連企業の健保が占める。利害関係上、ジェネリックの使用に加入者や保険者が消極的である可能性がある。このほか、大学の健保でも使用割合の低いところが少なくない。
このように、ジェネリック使用割合を保険者別に見るだけでも様々な「気づき」が生まれる。医療の効率化・適正化を継続して推進するためには、こうしたデータの「見える化」がますます重要になろう。
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- 執筆者紹介
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経済調査部
シニアエコノミスト 神田 慶司
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