好対照な100年債

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2019年08月27日

最近、100年債が話題に上ることが多い。今月中旬には、2017年に発行したアルゼンチンの100年国債の価格急落や米財務省が償還期間50年または100年という超長期国債の発行について、投資家からのヒアリングを実施する見通しというニュースが伝わった。

このように普段はなじみの少ない100年債であるが、低金利環境を利用して実は様々な国が100年国債を発行している。Bloombergで集計すると、アルゼンチン、オーストリア、メキシコ、ベルギー、アイルランドなどで発行されており、発行額は合計225億ドルである。

100年国債の価格は好対照な動きになっている。例えば、アルゼンチンの米ドル建て100年国債(利率:7.125%)は足元の10日程度で▲35%(8月12日~8月21日)と大幅に価格が下落した。今年10月に予定される大統領選挙の予備選挙が8月11日に行われたが、現職のマクリ大統領の得票率が大衆迎合的な政策を打ち出す野党候補の得票率を15%ポイント下回り、金融資本市場では選挙結果が嫌気されたことが要因である。

一方で、2017年に利率2.1%で発行されたオーストリアのユーロ建て100年国債の価格は、年初来+70%(8月21日時点、以下同じ)と大きく上昇している。発行時に投資していれば、価格はほぼ2倍と驚くべき状況である。メキシコは2010、2014、2015年と過去3回にわたって100年国債を発行している常連国である。通貨は米ドル、英ポンド、ユーロと毎回異なり、利率はそれぞれ5.75%、5.625%、4.0%である。2010年に発行された100年国債の価格は、年初来で同+22%上昇している。この他、ベルギー、アイルランドの100年国債も年初来の価格は大きく上昇している。

アルゼンチンのようなケースもあるが、多くの債券がマイナス利回りで取引される中で、100年後という非常に先行きが見通しづらい時期に償還される債券にマネーが向かうのは少しでも利回りを得ようという投資家の動きを表しているように思える。このような状況はいつまで続くのだろうか。投資家は音楽が鳴っているうちは、踊り続けなければならないというが、まさにそのような状況なのだろう。

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神尾 篤史
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 神尾 篤史