「人生100年」を気にするべきは若者たち
2019年07月11日
いわゆる「老後2000万円問題」は、老後に向けてどれだけ自助努力が必要かの試算が発端となった。直近の収入や支出をもとにした試算方法からもわかるように、すでに高齢層の人々、あるいは間もなく高齢層に入ろうとしている人々を想定したシミュレーションである。現在まさに関心の高い層であるからこそ、政治の舞台で白熱したとも言えそうだ。
もっとも、「人生100年時代」がこれから本格化することを考えると、もっと後の世代、すなわち現時点での中年層さらには若年層こそが真剣に向き合わなくてはならない問題であろう。実際にその世代はとても不安に感じているようで、例えば、日本FP協会のアンケート調査(「世代別比較 くらしとお金に関する調査2018」)によれば、老後のくらしに対して、30歳代では実に85%が不安に感じているとされる。すべての世代の中で最高の割合である。
ただ、その漠然とした不安が、なかなか行動に結びついてこなかったという現実もある。将来のことを考えれば、早くから資産の効率的な運用を始めるに越したことはない。だが若年世帯において、貯蓄に占める預貯金の割合、すなわち運用しない割合が年々上昇してきた。総務省の全国消費実態調査に基づけば、30歳代では1999年に54%であった預貯金割合が、15年後の2014年には68%まで高まった。30歳未満の世帯に至っては63%から81%へと、さらなる大幅上昇である。50歳代以上の世帯では15年間ほとんど変化がなかったのと極めて対照的である。若年層における“保守化”の進展が窺われる。
背景に、所得の伸び悩みなどの経済情勢、市場の低迷などの金融情勢もあり、ある意味合理的な結果という捉え方も一部にはできるだろう。しかし、その世代の金融リテラシーが十分でなかったこと、また金融機関もその世代にあまりフォーカスを強めてこなかったこと、などもそれを助長した可能性があるのではないか。
こうした課題を埋める一つの手段が2018年1月にスタートした「つみたてNISA」である。2019年3月末時点のつみたてNISAの口座数(金融庁)は20歳代と30歳代で合計51万口座となり全体の4割を占めている。一般NISAで14%程度にとどまっているのと比べると、若年層割合が格段に高い。こうした手段の提供が、金融行動の変化を促し、リテラシーの向上ももたらすという好循環につながることを期待したい。
既存の金融機関にとって、経営環境が悪化する中で若年層向けビジネスに大きな営業リソースを割きにくいという現実もあるが、将来顧客を視野に入れなければ持続性が問われることにもなる。「人生100年時代」に直面する若年層の自発的行動を促すためにどうするか、もっと各方面で議論を活性化していく必要があると感じる。
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