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「ゆとり世代の消費意欲が低い」は本当か?

2019年06月17日

金融調査部 研究員 中村 文香

アメリカでは1981年から1996年までに生まれた世代(※1)を「ミレニアル世代」と呼び、次世代の消費・資産形成のボリューム層として注目されている。日本でこの「ミレニアル世代」に最も近い世代は、「ゆとり世代」であろう。「ゆとり世代」とは、小中学校において2002年度施行の学習指導要領による教育を受けた世代を指す。1987年から2004年に生まれた世代(2019年時点で15~32歳)で、日本の総人口の18%を占めており、将来、消費や資産形成の中核を担っていく若年層である。「ゆとり世代」はどのような特徴を持っているのだろうか。

「ゆとり世代」は一般に貯蓄率が高く、消費意欲が低いと指摘されることが多い。総務省の家計調査を用いて、「ゆとり世代」と「団塊ジュニア世代」(1971年から74年に生まれた世代、2019年時点で45~48歳)が20歳代後半から30歳代前半だった頃を比較してみる(図表)(※2)。まず目を引くのは、「ゆとり世代」の高い平均貯蓄率だ。「団塊ジュニア世代」が29%であったのに対し、「ゆとり世代」は42%と大幅に上昇している。その背景には、老後の生活への不安があるかもしれない(※3)。しかし、可処分所得は減少傾向にあるため、貯蓄できる額は多くはない。

消費に目を転じると、「団塊ジュニア世代」と比較して平均消費性向は低くなっており、「ゆとり世代の消費意欲が低い」との指摘は、一見当たっているようにも思われる。しかし消費支出の内訳を見ると、減少に寄与したのは、「教養娯楽」、「自動車等関係費」(「交通・通信」に含まれる)といった項目であった。「教養娯楽」の耐久財にはテレビやパソコン、音楽プレーヤーなどが分類される。「団塊ジュニア世代」が20歳代後半から30歳代前半だった2000年代前半は、カメラ付きの携帯電話や、ポータブルMDプレーヤーの普及拡大期であり、パソコンもまだデスクトップ型が中心であった。ところが2010年頃からスマートフォンが普及し始めると、多くの機器がばらばらに担っていた機能を、たった一台で代替できるようになり、価格も低下した。この技術革新が、「ゆとり世代」の「教養娯楽」の消費額の減少に寄与している可能性がある。

「自動車等関係費」の減少については、車を所有せず、必要な時にシェアをするといった行動の変化がその要因として考えられるだろう。都市の規模別に見ると、都市の規模が大きいほど「自動車等関係費」が少ない。交通インフラやカーシェアサービスが普及している大都市部に住む者にとって、自動車を所有する必要性が低くなっている。34歳以下の人口のうち、三大都市圏に住む者の割合が2000年から2018年にかけてさらに高まっていることが(※4)、「ゆとり世代」の「自動車等関係費」減少に寄与している可能性がある。「ゆとり世代」は必ずしも消費意欲が低いわけではなく、技術革新や社会環境の変化を背景に、消費額が抑制されている側面があるのではないか。

一般には「団塊ジュニア世代」と「ゆとり世代」の消費マインドは大きく異なると指摘される。しかし、実際には技術の発展や社会の変化を受けて消費額が減少しているだけで、消費意欲そのものは世代間で大きな差はないのかもしれない。もしそうだとすれば、「ゆとり世代」のニーズを正確に把握することで、消費喚起は十分に可能となるのではないだろうか。

(※1)Pew Research Centerによる定義。
(※2)ゆとり世代は、単身世帯のうち勤労世帯(34歳以下)の2015年から2018年のデータの平均値を、団塊ジュニア世代は同2000年から2003年のデータの平均値を用いている。
(※3)内野 逸勢・矢作 大祐・森 駿介・中村 文香,2019,「大きく変わる金融業の次世代顧客層」,大和総研調査季報2019年春季号(Vol.34).
(※4)総務省統計局「人口推計」。三大都市圏とは、東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)、名古屋圏(岐阜県、愛知県、三重県)、大阪圏(京都府、大阪府、兵庫県、奈良県)のこと。

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金融調査部
研究員 中村 文香