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予断を許さない米中摩擦と正念場を迎える世界経済

2019年06月13日

経済調査部 主席研究員 齋藤 尚登

米トランプ政権は、5月10日、中国からの輸入品2,000億ドルに対する追加関税を10%から25%に引き上げた。これに対して、中国は6月1日に米国からの輸入品600億ドル分に対する追加関税を従来の5%、10%の2段階から、5%、10%、20%、25%の4段階で賦課する措置を発動した。さらに、米国は5月13日、これまで制裁対象としていなかった対中輸入品目3,000億ドル分に対しても最大で25%の追加関税をかけると発表したが、発動までには2ヵ月程度の準備期間が設けられる。

こうした状況下で中国は米国への批判を強め、態度を硬化させている。

5月下旬には、米国が追加関税リストから外したレアアースを巡り、中国が対米禁輸措置を検討しているとの思惑が台頭した。商務部報道官は5月30日の定例記者会見で「いかなる国でも中国が輸出したレアアースで製造した製品を使って、中国の発展を抑え込み、圧力をかけるなら、それは心情の面でも道理の面からも受け入れ難い」などと発言した。レアアースは世界の生産量の7割を中国が握り、米国の対中輸入依存度も高い。

さらに、商務部は「非信頼エンティティー・リスト」制度を近々導入すると発表した。詳細はこれから決めるとのことだが、①中国の企業、組織に対して封鎖、供給遮断またはその他の差別的措置を取り、②非商業目的で、市場ルールおよび契約の精神に背き、③中国企業または関連産業に実質的損害をもたらし、④中国の安全保障の(潜在的)脅威となる、外国企業、組織、個人をリスト化するとしている。当然、この背景には、米国がファーウェイ等をエンティティー・リストに加えたことがあろう。

加えて、6月2日に国務院新聞弁公室は、「米中経済貿易協議に関する中国の立場」を発表し、①米国が起こした中国との経済貿易摩擦により、米国、中国、そして世界の利益が損なわれている、②米国は協議で前言を翻し、信義を重んじない、③中国は常に平等・互恵・信義に基づく協議を堅持している、などとした。この中には「貿易戦争について、中国は戦うことを願わないが、恐れないし、必要な時は戦わざるを得ないし、その時には徹底的に戦う」といった強い表現も使われている。

それでも米中協議に中国側は望みを捨てていない。中国からの痛烈な米国批判は省庁レベルからの発信にとどまっているし、レアアースについては、省庁の定例会見で相次ぐ質問に対して「対米輸出禁止」という言質は取られないように細心の注意がなされている。習近平国家主席が何らかの政治判断を下す余地は残されているということだ。中国は「残りの品目3,000億ドル分に最大25%の追加関税」の回避を諦めておらず、こうした一線を越えない反応がそれを物語っている。

しかし、協議の行方は予断を許さない。中国でモノを作って米国に輸出する企業にとって、中国で製造する優位性は損なわれ、製造業投資は減速しているが、米国がほぼ全ての対中輸入品目に追加課税という事態に陥れば、もう一段の悪化が懸念される。中国が報復として、レアアースの対米輸出を禁止すれば、米国のハイテク産業を中心に影響が及ぶことになる。米中のみならず世界経済への悪影響はより深刻化・長期化する可能性が高い。世界経済は正念場を迎えている。

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経済調査部
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