株式市場の業種構成の変化
2019年05月14日
日本においてIPO(株式の新規上場)を行った企業の数は、この数年概ね90社前後で推移している。2000年代半ばの水準には及ばないものの、リーマン・ショック前後の急減からは回復し、安定しているといってよいだろう。
業種別の内訳を見ると、情報・通信業やサービス業が多く、2018年はこの2業種によるIPOが全体の約6割を占めた。全体のIPO企業数が2000年代半ばに比べ減少する中、この2業種はさほど減少せず、毎年ある程度の企業がコンスタントに上場している。一方、製造業や卸売業、小売業に関してはIPO企業数が減少傾向にある。
1990年代以降、日本の国内総生産に占める経済活動別(業種別)比率を見ていくと、情報・通信業は上昇傾向に、製造業は低下傾向にある(※1)。こうした日本経済全体の構造変化が、IPO企業の業種構成にも関係しているのかもしれない。
一方、日本の株式市場を代表する東証の市場第一部(以下、東証1部)の業種別時価総額に目を向けると、情報・通信業が占める比率に上昇が見られるものの、製造業が2000年代・2010年代を通じて約5割を占める状況が続いている。IPO企業の業種構成が変化すれば、市場全体の業種構成も変化しそうだが、IPO企業の多くは企業規模(時価総額)が相対的に小さく、新興市場(主にマザーズおよびJASDAQ)への上場を選択している。そのため、こうした業種のIPO企業の割合が増えても、東証1部の時価総額(業種別構成比)にはさほど影響を与えていないのが現状である。実際、マザーズおよびJASDAQの時価総額(業種別構成比)を見ると、製造業が30%、情報・通信業が26%、サービス業が15%と、東証1部の業種別構成比とだいぶ異なっている(図表2)。
1990年代から2000年前半に株式市場に登場した(株式店頭市場への登録を含む)ソフトバンクグループや楽天、サイバーエージェントなどのように、成長を遂げ、東証1部に市場変更した企業も少なくない。IPOをした後に大きく成長する企業が増えていけば、東証1部の時価総額の業種別構成比も、いずれ新興市場のような構成比に変わっていくのかもしれない。
(※1)IPO企業数の業種別比率に関しては東証33業種を基に集計しており、国民経済計算の経済活動別の業種区分とは定義が異なる。
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金融調査部
主任研究員 太田 珠美
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