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日本の役員報酬開示は米英並みになるのか

2019年04月22日

金融調査部 研究員 藤野 大輝

日本の上場会社等は有価証券報告書において、役員報酬に関する各種の開示を求められている。今般、この開示に関する法令が改正され、役員報酬に関する開示が拡充された(※1)。3月決算の上場会社等は早くもこの新たな開示の対応に追われていることではないだろうか。

今回の改正は、ディスクロージャーワーキング・グループ(DWG)における議論・報告を踏まえたものであるが、DWGでは米英における役員報酬の開示が参考にされていたため、今回の改正も、米英を参考にしている点があると考えられる。

日米英の役員報酬に関する開示の規定を比較してみると、今回の改正により、「業績連動報酬の開示」、「役員報酬の決定方針に関する開示」、「取締役会・報酬委員会等の活動内容」、「株主総会での決議」について開示が拡充され、これらについては、少なくとも法令上は米英並みの開示になったと言えるのではないかと考えている。

ただし、日本と米英において、依然大きく開示レベルが異なる点が一つある。それは、役員ごとの個別の報酬開示である。日本では、役員ごとの報酬について、「氏名」、「役員区分」、「報酬総額」、「種類別の報酬額」の開示が求められているが、開示対象の範囲は「連結報酬等の総額が1億円以上の者に限ることができる」とされている。

一方、米国では、すべての取締役(director)について、日本とほぼ同様の内容の開示が求められるとともに、CEO、CFO、報酬額上位3名の経営陣幹部(executive officer)は、報酬全体、計画ベースの報酬、株式報酬、年金、非適格繰延報酬について、それぞれ表形式で詳しい開示が求められている。英国では、すべての取締役(director)について、報酬全体、インセンティブ報酬、株式報酬、年金などについて、詳しい開示が求められている。

このように、日本に比べると米英は役員ごとの個別開示が非常に充実している。DWGでも個別開示について議論が行われた。日本も米英を参考にして個別開示の対象となる役員の範囲、開示項目等を見直すべきであるという意見がある一方で、「日本は米英に比べて報酬額が小さい」、「報酬全体に係る開示が拡充されれば、報酬の適切性の検証は可能」という個別開示の拡充に反対する意見もあった。

これらを踏まえ、DWGの報告では、「まずは、役員報酬プログラムの内容の開示の充実を図り、その上で、報酬内容と経営戦略等との整合性の検証の進展や、我が国における役員報酬額の水準の変化等を踏まえながら、必要に応じて個別開示のあり方について検討すべき」とされた。つまり、今後の開示によってどこまで役員報酬の適切性が検証できるかを見た上で、個別開示の拡充の必要性を検討するということである。

先述のとおり、日本の役員報酬の開示のレベルは今回の改正によって、個別開示を除けば、法令上は米英並みになったと考えている。6月の株主総会後に提出される有価証券報告書における記載が、改正の意図のとおり、それぞれの企業の報酬プログラムの内容や決定プロセスがよくわかるものになっていれば、個別開示の拡充は必要ないと判断されるかもしれない。

しかし、例えば、上場会社等が不十分な記載、もしくは横並びの決まり文句のような記載を行い、その企業における報酬プログラムや決定プロセスが投資家等にとって十分に理解できないものであれば、やはり個別開示の拡充を行っていく必要があると判断されてしまう可能性もある。

どこまで詳細な開示を行うかは企業にとって悩ましいところだが、あまり簡素な記載にしすぎると、思わぬしっぺ返しを食らうかもしれない。開示を行う際は、こうした事情も念頭に置いた方がいいのではなかろうか。

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藤野 大輝

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金融調査部
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