職場に会話ありますか?
2019年03月06日
昨年のことであるが風邪をこじらせ、声が全くでない状態が暫く続いた。幸いにして、その期間中に顧客との面談の予定は無く、顧客への連絡や社内のやり取りは、すべてメールで済ませることができた。結果的に話すことなくその期間の仕事を終えることができた訳であるが、ただ、それで済んでしまったことに、「何か物足りなさ」を感じたのも事実である。
昨今、メールのみならずビジネスチャット等、様々なICTツール(以下、「メール等」とする)が会話に替わる手段としてビジネスシーンで利用されるようになってきた。上司と部下、同僚等の間において、報告・連絡・相談をメール等で行うことも多いだろう。もちろん「記録を残す」「相手の都合を考えて」「業務効率」といった観点からは理に適っている。ただ、この場合、実際に会話を交わすことによるメリットも同時に失っている点に気付いているだろうか。例えば、部下からの相談において、実際の会話であれば、相手の声や表情を感じ取り、アドバイスの方法を変えることもできる。さらに、メール等では相談に至らない内容であっても、会話であれば気軽に話すということもあるかもしれない。また、同僚間で相談する場合であっても、会話のキャッチボールが、「相手の考え方」と「自らの考え方」を融合させ、新しい「気付き」や「アイデア」を産み出すこともあるだろう。テキストベースの文字のやり取りだけでは、このようなことは難しい。
顧客とのやり取りも同様である。私が担当する退職給付会計受託計算業務においても、データ授受から報告まですべてメール等で済ませることもできる。ただ、退職給付会計で取り扱う数値は、様々な前提条件を設定し複雑な見積もり計算を行っている。前提条件を少し変えるだけで計算結果は動き、企業会計に大きな影響を与える。そこで、「なぜ計算結果が変動したのか?」、「目に見えないリスクはどこにあるのか?」といったことを専門家であるコンサルタントが自らの言葉で説明する。さらに、一方的に伝えるだけではなく、会話の中から、顧客が理解出来ていない点や本当に困っている点を探ることもできる。顧客との会話の中には、我々がビジネスを進めるにあたっての重要なアイテムが沢山埋もれている。事務的な連絡はメール等で済ませて業務効率化を図ることも必要であるが、顧客との会話こそがコンサルタントして最も大切にしなければならない点であり、顧客に対する付加価値の提供であると考えている。
今後も様々なICTツールの開発やAIの進化によって、人間同士のコミュニケーションの形もどんどん変化していくだろう。「AIにできない仕事は何だろうか?自らのビジネス上の価値は何か?」といった課題に対し、人との会話(コミュニケーション)には普遍的な価値があると考えている。こんな時代だからこそ、私は人との会話を今まで以上に大切にしていきたい。
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- 執筆者紹介
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データアナリティクス部
主席コンサルタント 市川 貴規
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