ミャンマーという国を知っていますか

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2019年02月27日

  • 佐藤 清一郎

ミャンマーは、アセアン加盟国の一つです。しかしながら、どこにあるのかも含めて、いまだに多くの人が、あまり知らないというのが実情ではないでしょうか。アセアン加盟国の中では未知なる部分が一番残っている国かもしれません。ミャンマーがあまり身近でないのは、欧米の経済制裁などで長らく国際社会から疎遠になっていたことが影響しているものと思われますが、実は、ミャンマーは、人口が5,000万人を超えて、国土面積が日本の約1.8倍もあります。肥沃な土地に恵まれた農業国であり、また、鉱物資源が豊富な資源国でもあります。経済発展段階が初期のステージのため、今後の成長への期待は大きく、十分に投資対象国になりうる存在なのです。

ここでは、ミャンマーについて気になっていることを2つ紹介します。一つは、ミャンマーは、本当に「アジアの最貧国」なのかということです。世界銀行のデータによれば、ミャンマーは、国が定める貧困基準による貧困層の割合が人口全体の3割を超えており、確かに、アジアの中では高い比率に属します。また、ミャンマーに関するテレビ報道では、NPO法人が、教育や医療分野で、貧困に苦しむ人々を支援するものが多く見受けられるため、貧しい国なのだという印象を持ってしまいがちですが、実際に、ミャンマー最大の商業都市であるヤンゴンを訪れてみると、大型ショッピングセンターがいくつもあり、買い物や食事を楽しんでいる人がたくさんいますし、自動車の数も相当に多く、渋滞は日常茶飯事です。以前は、日本の中古車が主流でしたが、最近では、ドイツの高級車を含め新車の数も増えてきました。このような風景を見ると、この都市の、どこに貧困があるのかと思ってしまいます。もちろん、ミャンマーの中でヤンゴンが極めて特殊な都市であることや所得格差が極めて大きいことなどがあるため、国全体として見れば、いまだに貧困に苦しんでいる地域がたくさんあるのは事実なのですが、それにしても、ヤンゴンの風景は、ミャンマーを「アジアの最貧国」と認識するには、かなり無理があります。つまり、ヤンゴンだけを見てミャンマー全体を語ることはできないし、また、ミャンマー全体のデータからミャンマーを語ることもできないということです。

もう一つは、ミャンマーにはたくさんの観光資源があるということです。ミャンマーを観光地だと思っている人は少ないと思いますが、他のアセアンの国と比較しても十分に観光地といえるものはたくさんあります。まずは、ビーチリゾートです。ミャンマーの南西側はベンガル湾に、南側はアンダマン海に面しており、遠浅のきれいな砂浜海岸となっているところが多くあります。海の水もきれいな場所が多く、シュノーケリングやフィッシングを楽しめます。代表的なビーチリゾートとしては、ガパリ、グエサウン、チャウンター、コータウンなどがあります。ホテル設備、レストラン、ビーチアクティビティなどの面では、タイのプーケット島やインドネシアのバリ島などアジアの代表的なビーチリゾートと比べるとかなり整備が遅れているとの印象は否めませんが、自然の美しさや砂浜のきれいさは、これらのビーチリゾートよりも優れているかもしれません。ビーチリゾートの他では、エーヤワディ川でのリバークルーズ、インレー湖でのボートツアー、バガンやインレー湖での気球遊覧などを楽しむことができます。また、ミャンマーは仏教国ですので仏塔関連もミャンマー全域で見るべきものがたくさんあります。代表的なのは、ヤンゴンの街中に圧倒的な存在感を持ってそびえるシュエダゴン・パゴダ、不思議な石であるゴールデン・ロック、2,000を超える仏塔や寺院が立ち並ぶバガン遺跡、ポッパ山の仏塔、パヤトンズ遺跡群、シャン州にあるカックー遺跡やピンダヤ洞窟寺院などです。

こうした状況にありながら、観光目的でミャンマーを訪れる人は極めて少ない状態が長く続きました。こうした背景の一つには、長期の軍事政権が、外国人が国内に入ることを極度に嫌ったことがあります。2011年の民主化以降は、かなり観光客は増え、民主化以前は年間100万人に満たなかった外国人旅行者数は300万人を超えていますが、他のアセアンの国と比べると、依然としてかなり少ないのが実情です。外貨獲得に向けて、ミャンマー政府には、まずは外国人旅行者数の年間1,000万人超えを目標に、積極的な観光振興策を期待したいところです。

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