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平成の30年を振り返って

2018年12月20日

リサーチ本部 執行役員 リサーチ担当 兼 政策調査部長 鈴木 準

平成の30年がまもなく終わる。筆者のこれまでの社会人生活はほぼそれに重なっているが、事態は30年前と何も変わっていないし、むしろ問題は悪化しているという会話を同世代とすることが増えた。確かに、長期金利は趨勢的に低下し続け、賃金や物価の動きを振り返っても経済の体温が上がるという実感が続いた時期はあまりなかった。

IMFの推計によると日本の人口1人当たりGDP(購買力平価換算)は、平成元年(1989年)に世界で23位だったが、平成30年(2018年)は比較可能な国・地域ベースで29位である。重要なのは内外価格差を考慮した生活水準であり、市場レート換算で1989年に4位だった地位から2018年の24位まで凋落したと捉えるのは適切でない。産業全体の低生産性を考えれば、日本はもともと平成の最初から強い経済ではなかった。

また、1989年に99.3%だった総人口に占める日本人人口の割合は、2018年6月時点で98.3%であり、社会の国際化はほとんど進んでいないように見える。1989年に10.3%だったGDPに占める輸出の割合は、直近の1年間(2017年10-12月期~2018年7-9月期)で18.3%に上昇しているが、これだけグローバル化が進み、輸出を拡大させる機会が広がっていることを踏まえるとかなり物足りない。

金融面では、私が新入社員だった当時、これからは資本市場がますます発展し、東証1部の時価総額も債券市場の規模(公債等の残高)もいずれ1,000兆円を超えると先輩から聞かされた。だが、実現したのは後者だけで、家計の金融資産は預貯金偏重のまま資本の収益率を高められないでいる。我々は、生産性の低さを随所に温存したまま、将来世代の負担で現在の生活水準を維持しようとはしていないだろうか。

しかし、日本経済の底力には凄まじいものがあるのも事実である。平成の最大の特徴の一つはバランスシート調整だと思うが、1990年末から2013年末にかけて、日本の土地の時価総額はなんと約1,400兆円も失われた。それにもかかわらず、壊滅的な状況には至らず、なんとかそれを乗り越えたということは経済史としても特筆に値する。

また、大きく進歩した点も多い。平成の30年で人々のコンプライアンスや環境、健康への意識は格段に高まり、組織の情報開示とガバナンスはかなり高度化した。格差は昔からあったが、それをより正確に測定できるようになり、様々な「見える化」が政策論議を科学的なものにしている。平成の間に人々のITリテラシーは大きく向上し、諸外国と比較して日本はデジタル・ディバイドが小さく、Society 5.0を実現していく素地ができてきた。

所得や幸福度を高めるための今後の課題は、オープンでインクルーシヴな社会の構築だろう。「世界価値観調査」などからは、日本は初対面の人をあまり信用せず、人は他人との関係において“公正に対処する”のではなく“機会に乗じてうまくやろうとする”ものだと考えている人が多い社会であることが窺われる。それが悪いわけではなく、相手へ不利益をもたらす行動は因果応報で自分の不利益になるため行われないという、相互の監視と規制によって安心や信頼が担保されてきたということだ。だが、ポスト平成は、人口が減少する中で多様なアイデアを出し合い、世界との交流を拡大させる必要のある時代だろう。これまでは不要だった「他者を信頼する能力」を磨くことが不可欠となっていくに違いない。

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鈴木 準

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