2025年11月20日
サマリー
◆将来の財務情報としての非財務情報の重要性に対する認識が高まる中、統合報告書などで、非財務情報と企業価値の連関を自社の仮説に基づき、ロジックツリーのようなかたちで示す企業が増えている。その仮説をより確かなものとするために、定量データに基づく分析を行う先進的な企業も徐々に増えている。
◆現状の開示事例としては「柳モデル」を用いた分析が多く見られる。分析対象としては、非財務情報全般というよりは、人的資本にフォーカスしたものが多い。一部では、非財務情報と企業価値の相関分析に留まらず、両者の因果関係も考慮した分析や、AIを用いて未来をシミュレーションする企業もある。
◆非財務情報と企業価値との連関を明らかにすることに企業自ら挑戦すること自体、称賛に値するものであるが、分析や開示の質を向上させる上で、改善すべき点もある。
◆まず、分析の目的が不明確なケースである。対外的な情報発信においては、その目的を明示することは当然のことであり、分析結果を投資家向けにもアピールするのであれば、分析の目的や手法、結果の解釈や読み解く際の注意点について、より丁寧な説明が必要である。
◆次に、相関と因果が混同されているケースである。相関関係について分析をすることを明示しながら、分析結果についてはあたかも因果が存在するように示している事例が散見される。
◆最後に、時間的なラグの取扱いである。特定の年のデータとの相関のみを有意な結果として示すだけでは、都合の良い数値のみを取り上げている印象を与えてしまいかねない。もしそうでないのであれば、丁寧な説明や更なる分析をすべきである。
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