世界が再注目、実現に動き出すソブリンAI

日本のAI基本計画が描くデータ主権と技術的自立への道筋

RSS

2025年11月19日

サマリー

◆AI技術の急速な進化を背景に「ソブリンAI」が再び注目されている。ソブリンAIとは、国や企業が自国・自社のデータや技術基盤を活用し、外部への依存を最小限に抑えつつAIシステムを自立的に開発・運用する能力を指す。その根幹には、「データ主権」や「技術的自立性」の確保を目指し、自らのデータを自国・自社で管理・運用するという戦略的な姿勢がある。

◆国や企業はAIを戦略的に活用する段階へと移行しつつある。その結果、①データ主権および安全保障の確保、②技術的自立性の確保、③国内産業の強化、④文化・社会的適合性の確保など、AI技術を外部へ依存することによる多面的な課題が浮上してきた。米中による技術覇権争いが続く中、EUや韓国など第三国では、AI基盤モデルの開発力強化やインフラ整備、人材育成などを柱とした政策的取り組みが加速している。

◆日本においても、信頼できるAIの開発支援を盛り込んだ「人工知能基本計画(AI基本計画)」の策定が進められている。骨子では、技術的自立性の確保を目指し、日本語や産業データの整備、民間連携による研究開発体制、高性能AI半導体などのインフラ強化などが挙げられている。これらの取り組みを通じて、国内のAIエコシステムの構築および国際競争力の強化を図る方針だ。

◆実現に向けては、技術・人材・資金面で多くの課題がある。AI関連技術の優位性の獲得・維持には継続的な研究開発が不可欠であり、必要な環境の整備や運用コスト、人材確保などの負担も大きい。民間企業が単独で持続的な体制を構築するには限界がある。今後は、国際的なルール形成や、他国との連携・協力を通じた競争力強化と技術的自立性の確保の両立を目指しつつ、官民が連携してAIエコシステムを構築し、実効性のある制度運営を通じて競争力を高めていくことが重要となる。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート

同じカテゴリの最新レポート