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ニュージャージー州のある地方銀行の取り組み

2018年11月07日

ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鳥毛 拓馬

先般、ニュージャージー州に本店を置く、ある地方銀行を訪問する機会を得た。同行は、ニュージャージー州とニューヨーク州に約150店舗を展開し、役職員数約2,000人を有する。現在のCEOが同行に役員として参画した2000年代前半当時は、スリフト(Thrift)と呼ばれる貯蓄銀行であり、顧客から集めた預金を主に債券などの証券に投資することで利益を得る「活気のない」銀行であったようだ。

ところが、彼がCEOに就任した2008年以降、経営戦略の見直しが行われ、従来のリスク回避型経営を行っていたスリフトからフルサービスを提供する商業銀行へと転換を目指すこととなった。就任以降6年間で9社の金融機関を買収するなどして、総資産を3倍強の現在の約250億ドルまで拡大したということである。直近5年間でも総資産は61%、ローンは54%、預金は62%、それぞれ拡大している。総資産については、米国に約130社ある総資産100億ドル以上の銀行持株会社のうち、70番台に位置する規模にまでなった(※1)。同行の強みである企業向け融資や住宅ローンに特化したことが、ここまでの成功の主な要因であるという。

このような大きな変革を遂げるにあたり、従業員の意識や企業文化も変える必要があった。ファストフード業界での研修を実施するなど他業界からの学びも得て、顧客や地域により良いサービスを提供する意識を醸成することに努めたということである。

今後については、引き続き企業向け融資に注力するとともに、大手銀行や他の地方銀行、フィンテック企業と伍していくための戦略的課題として、モバイルテクノロジーの強化やIT投資の拡大を挙げていた。印象的であったのは、テクノロジーがどんなに進化しても顧客とのリレーションシップの重要性は変わらず、したがって、支店数を減らすことなどは考えていないという点である。また、競争相手になるフィンテック企業と同様のサービスを提供する必要はあるものの、自分たちは預金を獲得できるというフィンテック企業にはないメリットがあり、だからこそ、今後もさらに預金を獲得するための戦略に注力するとの話もあった。

米国においても、短期間でこのように規模を急拡大させることができた地方銀行は数少ないようである。日米で経済状況や経営環境は当然異なるものの、自社の強みをより強化して、大きな変革を遂げたこのような取り組みは、日本の地方銀行にも参考になるかもしれない。

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ニューヨークリサーチセンター
主任研究員(NY駐在) 鳥毛 拓馬