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ふるさと納税のジレンマ

2018年10月29日

今年も残り2ヶ月となり、そろそろ年の瀬について計画を立てる時期となってきた。今年度のふるさと納税の期限(所得税)も迫り、検討する人も多くなってきたことだろう。

返礼品等の充実から、ふるさと納税はここ2、3年注目されているが、平成30年度で11年目を迎える。総務省「ふるさと納税に関する現況調査結果」によると、平成29年度のふるさと納税受入額は約3,653億円(前年度比3割増)、受入件数は約1,730万件(同4割増)と増加している。ふるさと納税の受入額や受入件数が増加した背景として、自治体への応援のほかに、返礼品への期待等が挙げられる。

しかし、政府がふるさと納税を導入した本来の目的は、納税者が「お世話になった地域に、これから応援したい地域へも力になれる制度」であり、「自治体は納税者の『志』に応えられる施策の向上」を行うことである(※1)。そのため、総務省は2017年頃より返礼品を寄附額の3割以下とするよう自治体に求めてきた。他方で、2018年9月に総務省から発表された「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果」によると、9月1日時点で246団体(全体の14%)が未だ返礼割合3割超の返礼品を送付している実態が明らかとなった。

自治体もジレンマを抱えている。返礼割合を引き下げるべきだと思っていても、ふるさと納税を行う人は、一定程度の返礼品を期待しているのが現状だ。そのため、自治体側は、ふるさと納税の受入額を増やすために返礼品を充実させるインセンティブが働く。もし、魅力ある返礼品を提示できない場合、他の自治体に税収を取られる可能性が高まると考えるのではないだろうか。

しかし、各自治体はこうした還元率のみの返礼品競争から脱却し、ふるさと納税を真に地域活性化へと活用するために知恵を絞るべきだろう。政府は、クラウドファンディング型のふるさと納税を活用し、地域の起業支援を行う「ふるさと起業家支援プロジェクト」を推進している。この中で寄附者は「ふるさと未来投資家」として位置づけられ、定期的な事業報告や製品の試供品の提供、事業所見学への招待、新製品の贈呈等、寄附者が自治体に継続的な関心を持つよう工夫されている。その後の交流を通し、寄附者に返礼品のみではない付加価値を与える。

ふるさと納税を地域経済活性化に結び付けるためには、寄附者の「その土地を応援したい」という気持ちを寄附に転換するよう、一度きりの返礼品のみで関係が終わらないように継続的に関心を持たせる工夫が鍵となるかもしれない。

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