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睡眠時間はどこへ消えた?

2018年10月02日

経済調査部 主任研究員 溝端 幹雄

日本人の睡眠時間が減少している。総務省「社会生活基本調査」によると、働いている人々(有業者(※1))の総平均睡眠時間は、1976年の8時間1分から2016年には7時間23分にまで38分も減少した。他国と比べても睡眠時間は短く、日本人は恒常的な睡眠不足に陥っている。

そうした中、最近、睡眠不足がもたらすマイナス面が注目されつつある。睡眠不足は肥満につながりやすく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病だけでなく、うつ病や認知症などを引き起こす要因にもなる。さらに、睡眠不足になると日中の集中力が切れるため、生産性低下の要因にもなりかねない。

このように様々な悪影響をもたらす睡眠不足であるが、それでは日本人が長年減らしてきた睡眠時間はどこに行ってしまったのだろうか?図表は、過去40年間の有業者の1日あたり生活時間の変化を男女別に見たものである。ここでは折れ線グラフが「睡眠」時間を表しており、睡眠時間が減少すると、右軸で見るようにグラフが上になるよう逆目盛を取っている。一方、棒グラフは他の生活時間の変化であり、睡眠時間の減少が何によってもたらされたのかが分かるように寄与度分解している。

まず、有業者の1日あたりの生活時間で最も増えているのは、男女共に「休養・くつろぎ」である。それに続いて増える傾向にあるのは、男女でその大きさは異なるが、入浴・身じたく・化粧などの「身の回りの用事」や、「通勤・通学」「趣味・娯楽」「移動(通勤・通学を除く)」である。特に移動時間の増え方が女性で大きくなっており、この40年間で女性の行動範囲が拡大していることが分かる。そして男性では、介護・看護や育児を含む「家事」時間も増えている。これらの生活時間の増加が男女の睡眠時間の減少につながっている。

しかしながら、それらの時間の増加は睡眠時間の減少だけでは補えず、他の時間も削る必要がある。足りない時間を埋め合わせているのは、有業者の男女共に「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」時間の減少だ。特に男性ではこの方法で多くの時間をねん出しているのが分かる。ここにはインターネットでのニュース閲覧も含まれているのでその時間はおそらく増えているものと思われるが、それ以上にテレビや新聞・雑誌を見なくなっており、その結果、男女共にこれらに費やす時間が急速に減っている。よく言われているテレビ離れの加速がこのデータからも確認できる。さらに仕事を持つ女性は、「家事」の時間を削ることで生活時間をやりくりしている様子もうかがえる。近年は共働き世帯も増えて就業する女性は増えているが、就業時間の短い非正規雇用で拡大しているため、女性が「仕事」をする時間は平均的に減っている。あと男性では、知人と飲食するといった「交際・付き合い」の時間が減り始めたことも注目される。

以上から、有業者はライフスタイルの変化や女性の就業等に伴う行動範囲の拡大によって、優先順位の低い生活時間を削り、それでも補えない部分として睡眠時間が減少しているものと推察される。したがって、睡眠時間を確保して健康面や生産性にマイナスの影響が出ないようにするには、比較的自由な生活時間のうち優先順位の低い時間をさらに減らすことに加えて、特に男性では働き方改革により就業時間を減らす、在宅勤務を増やす、長期的には職住近接を促す、といった政府・企業レベルでの対応も必要になってくるだろう。

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溝端 幹雄

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