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カリフォルニア州が女性取締役選任を義務化

2018年09月25日

政策調査部 主席研究員 鈴木 裕

2018年8月にカリフォルニア州議会は、米国市場で上場する州内の企業に女性取締役(female directors)の選任を義務付ける法律を可決した。州知事の署名を得た後、施行されることとなる。米国企業はデラウェア州会社法を設立準拠法としていることが多いが、本社所在地がカリフォルニア州であれば適用され、当面2019年末までに1名以上の女性取締役を置くこととされる。その後2021年末までに、取締役総数が5名の企業では、女性取締役2名以上、取締役総数が6名以上の企業では、女性取締役3名以上を置かなければならない。なお、ここで女性とは、生物学的な性別ではなく、当人が自分自身のジェンダーをどう認識しているかで決まる。

この規定の順守状況を企業から州政府に届け出ることと、州政府が企業の対応状況を集計し、報告書を作成・公表することも定められた。女性取締役数が未達の場合や届出をしていない場合など、最初の違反には10万ドル、2度目以降は30万ドルの罰金が科される。

女性取締役を置くことで、企業の経営に多様な価値観が反映され、事業を成功に導くとともに、州経済が活性化されると期待されている。米国では、カリフォルニア州が女性取締役の選任を義務化する最初の州となったが、欧州では既に多くの国々で上場企業に女性取締役を一定比率選任すべきとする法規定や企業行動規範が策定されており、その動向は日本にも及んでいる。わが国のコーポレートガバナンス・コードでは、当初から取締役会の多様性を求めていたが、2018年6月の改訂で、「取締役会は、…(中略)…ジェンダーや国際性の面を含む多様性と適正規模を両立させる形で構成されるべきである。」とジェンダーという用語が付加された。

企業社会における男女の平等や、女性の社会進出推進についての法制度的対応は、当然のことであり、一層の充実が期待されるが、こうした動向に疑問が呈されることもある。カリフォルニア州の新法に関する論評記事の中には、法制化に厳しい意見も少なくない。

まず、法的な規制の必要性や規制手段の妥当性への疑問がある。カリフォルニア州でも女性取締役が不在の上場企業がおよそ4分の1ある(※1)が、女性取締役数は増加を続けており、現状で法的対応をとる必要性は薄いという指摘がある。また、不平等の是正は、教育による方法もあれば、反差別法で行うということも考えられる。企業法の分野で対応をとる必要はないという指摘だ。

取締役会の多様性は、性別に限った問題ではなく、スキル(特に最近はIT系の知見)や専門分野、人種や文化の多様性も企業の活力になり得るとの意見もある。ことさら性別を取り上げることへの疑問だ。さらに、男女が共に働く職場は上場企業だけではないことから、カリフォルニア州の新法は上場企業の問題としているところも疑問視されている。未上場企業やNGO、労働組合に多様性が欠如しているという問題はないのだろうか。上場企業は株式会社であり、その取締役選任は株主の自治的な決定に委ねられるべきだが、女性定員制は、その自治権を侵害する可能性があるとも指摘されている。

企業における女性の処遇を適正化することは当然としても、法的規制の必要性や相当性については、様々な見解があり得るということだ。わが国でもいずれ欧州やカリフォルニア州のように女性取締役選任の義務付けが行われるかもしれないが、株主自治との関係等、検討しておかなければならない問題は数多い。

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