2018年09月19日
スタートアップ企業による資金調達が活況である。2017年の調達額は、過去10年で最高額となる2,791億円、前年比で21.7%増加している(株式会社ジャパンベンチャーリサーチ調べ)。
このように、スタートアップ企業にとって資金調達面での環境は急激に良くなってきている。一方で、日本では、米国シリコンバレーのように、「起業家、起業支援者、企業、大学、金融機関、公的機関等が結びつき、ベンチャーを次々と生み出し、それがまた優れた人材・技術・資金を呼び込み、発展を続ける『ベンチャー・エコシステム』が十分には育っていない。」「世界のベンチャー・エコシステムとも直結し、経済成長の中核となり、社会課題解決に貢献するベンチャーが、自発的・連続的に創出される社会を実現していく必要がある」との指摘がなされている。(※1)
このような課題がある中で、企業価値又は時価総額が10億ドル以上となるユニコーン企業を2023年までに20社創出することを目標に定めた「未来投資戦略2018」が平成30年6月に閣議決定され、ベンチャー支援強化策が打ち出された。
未来投資戦略の下、経済産業省は、スタートアップ集中支援プログラム「J-Startup」(※2)を立ち上げた。「J-Startup」では、スタートアップ企業約100社を採択、認定する。認定された企業は、大企業やベンチャーキャピタル、アクセラレーターなどの「J-Startup Supporters」から、海外展開も含め官民一丸となった集中的な支援を受けながら、ユニコーンを目指すことができる。
また、ユニコーンが何社も創出されるようになるためには、スタートアップ企業が数多く生まれてくることが必要となる。そのためには、起業を目指す個人への支援・育成が極めて重要になる。
このためのプログラム「始動Next Innovator」(※3)も経済産業省が立ち上げている。「始動Next Innovator」は、今年で4年目となるプログラムであり、受講生は、卒業生も含め500名を超える。この中から、事業を立ち上げ、起業家としての一歩を踏み出した人も数多く生まれている。億円単位の資金調達を行うまでに事業規模を拡大させている企業、グローバル展開を図っている企業、社会課題の解決に向け奮闘する企業など、将来が楽しみな企業も多い。
経済産業省としても、「『J-Startup』や『始動Next Innovator』のような取り組みを続けることが、日本にベンチャー・エコシステムを根付かせることにつながる」(経済産業省経済産業政策局 産業資金課長 兼 新規事業調整官 福本拓也氏)との強い思いがある。
大和総研は事務局として、株式会社WiL(※4)と共同で「始動Next Innovator」の運営を担わせていただいている。今年も志高い受講者126名が、一流の講師陣から指導やメンタリングを受けながら自らのビジネスプランを磨き上げ、事業化や起業に向け真剣に取り組んでいる。
現在、大学や自治体、企業等が、全国各地で様々なやり方で、起業家の育成、ピッチコンテストを開催するなど、起業家支援の取り組みは厚みを増している。この中で日本にもベンチャー・エコシステムが構築され、将来のユニコーンが20社と言わず、数多く生まれてくることを期待したい。そのためにも、今後も起業家支援、ベンチャー・エコシステムの構築に積極的に関わっていきたい。
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- 執筆者紹介
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コンサルティング企画部
主席コンサルタント 弘中 秀之
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