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地域銀行の中期経営計画の“勝手格付け”

2018年08月23日

金融調査部 主席研究員 内野 逸勢

最近、地域銀行の中期経営計画(中計)の評価を聞かれることが多い。厚かましいとは思いつつ、地域銀行の中計の比較、最近の地域銀行の中計担当者との対話を踏まえ、“勝手格付け”の基準を以下に3つほど提示したい。

第一の基準は中計の期間についてである。“中期”は通常3年であるが、3年以上の“将来の姿”を想定しているのかがポイントとなる。最近の中計担当者との対話では、10年程度先の銀行の姿を見据えている地域銀行が増えてきているが、現状の“銀行の姿”の殻を破れない“現状固執型の中計”が多いように思える。この理由として、3年では中計の目標数値を、実績値をベースに達成可能なように“整える”ことに精一杯となるとの指摘がある。“整えられた目標値”でも達成できていなければ、次期中計でも“整える”に集中してしまい、いつまでも長期的な視点が持てないという悪循環に陥る。現行の金融政策が維持されるとの前提で、コスト構造の改革、地域内の競争激化への対応など地域銀行のビジネスモデルの中長期的な持続可能性が懸念されている。10年先の将来を見据えて、懸念されている課題について着実に解決に向かうように“地に足の着いた中期経営計画”を策定する必要があるのでないか。“整えられた中計”は、見え方も形式的に見えてしまう。

第二の基準は中計からトップの意志(“顔”)が見えるかである。依然、トップの顔が見えない“フェイスレス型の中計”が多いのでないか。さらに、ただ“顔が見える”だけではなく、上場企業として経営ビジョン、方針、計画を、トップが自身の言葉で内外に説明していることも必要不可欠であろう。投資家への説明の重要性は言うまでもなく、中計に対する組織としてのコンセンサスを得るために銀行内部に説明することも重要であろう。このトップの言動の根底には、現経営陣が次世代の銀行の姿に責任を持つという“姿勢”が求められる。この姿勢が次世代を担う経営者と現経営者の関係を強化し、地域銀行のビジネスモデルの持続可能性を高める原動力となるのではないか。

第三の基準は中計がターゲット顧客に向き合っているかである。中計の内容を概観すると、ターゲットとする顧客が決まっているようで決まっていない“八方美人型の中計”が多いように思える。例えば、先端的なテクノロジーを活用して商品・サービスを提供すること自体は問題がないが、マス顧客層向けなのか、コア顧客層向けなのか不明瞭な中計も見られる。将来的なコア顧客層が不透明な中、誰のために地域銀行が存在していくのかが曖昧になっているように感じる。

これらの類型に当てはまる、格付けの低くなりそうな地域銀行が、依然、多数を占めているように思える。中計だけでは実態が把握できないことが多いため、実際には3つの基準での格付けとは異なることも十分考えられる。ただし、実感としては、何もしない地域銀行と何とかしようとしている地域銀行の差がすでに出始めているように感じるのは気のせいであろうか。

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内野 逸勢

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