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株式投資型クラウドファンディングの効能

2018年05月16日

金融調査部 主任研究員 土屋 貴裕

仮想通貨投資がブームになったということで、リスクをとってリターンを求める資金が潜在的に多くあることを示した。だがそれは投機的だろう。一方、株式は投資資金がゼロになるリスクはあるが、企業を応援し、成長させていく実質的な価値がある。そうした中で注目したいのは株式投資型クラウドファンディングである。クラウドファンディングとは、インターネットを通じて不特定多数の者から資金を調達する手法であり、資金の出し手が受け取る対価によって購入型、寄付型、投資型などに分けられる。商品やサービスを受け取る購入型が多いが、投資型のうち、資金の出し手が株式を受け取る株式型は、2014年の法改正で専門の業者も仲介できるようになり、2017年からようやく取引が増えてきた。2017年度は25件の案件が成立し、7.3億円が調達されている。株式の発行総額は1億円未満で、投資者一人当たりの投資額が50万円以下などの制約がある。

一般に、新しく会社を起ち上げた当初は、存在が知られておらず、エンジェル投資家やベンチャーキャピタル(VC)から資金を受け入れるにはまだ事業規模が小さい。そこで、自己資金の他は、知人・取引先・常連客などの「ファミリー・アンド・フレンズ」からの資金調達が必要だと考えられる。売上や利益の計上までに時間がかかる事業、複雑な事業には、VCからの投資よりもファミリー・アンド・フレンズの方が向いている場合があるとされる。株式型クラウドファンディングは、取引先や常連客が提供される商品やサービスなどを理解し、企業の理念に賛同して、その企業を応援する方法と言える。

株式型クラウドファンディングによって、調達企業は株式を発行して資本を充実させ、資本が増加すれば、地域金融機関からの借り入れも行いやすい。株式には経営参加権があることから、資金調達と同時に事業パートナー作りもできることになる。株主への情報開示が必要で、株主となった常連客の目は肥えているはずである。事業計画を練り直すことが必要になるかもしれない。さらに、小規模であっても株主総会の開催などを伴っていることから、組織体制を整備して、将来のVCからの資金受け入れや上場に向けた準備にもなる。

仲介者は、経営や財務面のアドバイス、投資家の勧誘を期待されているが、取引規模の小ささから大きな収益は期待しにくい。だが、リスクを取って企業を応援する資金を循環させることは、おそらく地方活性化への貢献となり、持続可能な開発目標(SDGs)達成への貢献となる。メリットが小さくても、自らの収益を上げることが社会のためになる一例と言えよう。

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金融調査部
主任研究員 土屋 貴裕