2023年、日本の宇宙ベンチャー企業は活性化しているか
2018年04月23日
2018年3月20日に、安倍首相は「宇宙ベンチャー育成のための新たな支援パッケージ」を発表した。政府・関係機関が一丸となって宇宙ベンチャー育成のために取り組む政策である。同政策の目玉は、今後5年間で、日本政策投資銀行や産業革新機構をはじめとする官民による約1,000億円のリスクマネー供給である。宇宙関連産業は、多大なリスクが伴い政府関係機関以外参入が難しかったが、その市場の拡大に目をつけたベンチャー企業の参入事例が増えてきたことが、この政策の背景にあると考えられる。
世界の宇宙産業市場の最大のプレーヤーである米国では、アマゾンのCEOが設立したブルー・オリジン社や、宇宙ホテルの建設を目指すビゲロー・エアロスペース社等、宇宙ベンチャー企業の参入が活発化している。その牽引役とも言えるスペースX社は、2012年に “火星移住”というサイエンスフィクションに登場するような計画を発表した。ロケット打ち上げコストを100分の1にする構想を掲げており、2017年には再利用ロケット打ち上げを、2018年2月には積載能力世界最大のロケット打ち上げを成功させた。ロケットの再利用と輸送能力の飛躍的拡大により、輸送単価が大幅に削減される見込みである。火星移住計画という夢の実現にも近づいている印象だ。
一方、日本の宇宙産業では、宇宙航空研究開発機構 (JAXA) と三菱重工業による「H3ロケット」の開発が注目されているが、これにかかる莫大な資金は基本的に国が負担している。一般に、潤沢な資金を調達できない民間企業、とりわけ、スタートアップしたばかりのベンチャー企業では、ロケット開発等宇宙ビジネスへの参入はハードルが高いと考えられる。
また、今回の「支援パッケージ」では、「衛星データのオープン&フリー化の推進と利用拡大のための実証拡充」を具体的な目標の1つとして定めている。衛星打ち上げのみならず、衛星を利用したサービス開発への参入可能性を高める施策として期待される。
従来、日本の技術開発は、研究先行となり商業化が遅いと指摘されてきた。「支援パッケージ」では、研究開発の推進を主眼にせず、宇宙ベンチャー企業の成長促進に焦点が当てられている点で、従来と異なる。5年後、日本の宇宙産業はどのように活性化し、どのようなサービスを受けることができるのだろうか。2023年への思いが高まるばかりである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
- 執筆者紹介
-
飯嶋 カンナ
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
一括取得型自己株式取得(ASR)入門
ASRに関する基本的な事項をQ&A形式で解説
2026年10月16日
-
「次期学習指導要領等に向けた審議まとめ」における金融経済教育に関する記述
金融経済教育関連に限ると、大幅な拡充は行われない方向性か
2026年10月16日
-
日本の長期金利、2035年に5%台の可能性
2035年に3.5~4.2%程度で、海外保有拡大で1%pt超の上乗せも
2026年10月16日
-
なぜ企業は同じ情報を何度も提出しなければならないのか
公的統計のデジタル化を問う①-負担軽減の「効果」
2026年10月16日
-
成長投資の先にあるもの ~AI時代に問われる「組織能力」~
2026年10月16日

