Society5.0時代の地方創生に向けて

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2018年02月20日

Society5.0時代において地方創生をどのように考えていくか。中長期的な地方自治体の活動のあり方を検討する上で関心が高い事項の一つである。ただし、Society5.0が社会あるいは個人の生活に何をもたらすのか明確ではない。むしろ、Society5.0という言葉がバズワード化して、“不確かさ”を助長しているのではないかと懸念している。このため、自治体としても一体何から手をつけていいのかわからない可能性があるのではなかろうか。


そこで政府のSociety5.0の定義を参照した。内閣府「第5期科学技術基本計画の概要」によれば、「サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)が高度に融合した『超スマート社会』を未来の姿として共有し、その実現に向けた一連の取組」となっている。地方創生の分野に当てはめようとするが、正直、適用が難しい。


ただし、同計画の「超スマート社会」の定義を見ると、「必要なもの・サービスを、必要な人に、必要な時に、必要なだけ提供し、社会の様々なニーズにきめ細かに対応でき、あらゆる人が質の高いサービスを受けられ、年齢、性別、地域、言語といった様々な違いを乗り越え、活き活きと快適に暮らすことのできる社会」となっている。これであれば、地方創生に当てはめると理解が少し深まる。例えば、“多種多様な問題を抱えて困っている人のすべてのニーズに公平かつ効率よく対応できる社会”と言い換えられよう。そうであれば先端的なテクノロジーを活用して「超スマート社会」を構築していくことが、地方自治体の役割であろうと想像がつく。この文脈では、Society5.0が地方の成長よりも、地方の持続可能性を高めることが、一義的な目的であると考えられよう。


このような目的を踏まえれば、まずは地方自治体のトップから現場の職員で、つまり“人”が、地方自治体の“社会の様々なニーズ”を可能な限りきめ細かくとらえることが重要であり、それが地方自治体の提供するサービスの付加価値の根源ではないか。それを見極めずに、テクノロジーの導入を中心とした「サイバー空間とフィジカル空間(現実世界)」の高度な融合に依存しすぎると、上記の目的からかけ離れる“取組み”になってしまう可能性があろう。人が付加価値を創出する中で、テクノロジーの役割を見極めた上で導入することが重要であろう。


まとめれば、“超スマート社会”では、デジタル化を促進する“スマートな革新的なテクノロジー”と、決してスマートではない地道な“人の活動”が付加価値を生むという“アナログ世界”とのバランスが必要であろう。


今後、地方自治体の中長期計画を検討する際の一助になれば幸いである。

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内野 逸勢
執筆者紹介

金融調査部

主席研究員 内野 逸勢