株式投資には無関心でもビットコインには熱狂?

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2018年02月06日

「年齢層が高いなー」。個人投資家向けIRセミナーに行った時の第一印象だ。おそらく参加者の大半が50歳以上で、中心は60歳以上であると思われる。参加者は企業の説明に熱心に耳を傾け、メモを取っていた。休憩時間にはそこかしこで配当や株価の話題で楽しそうに盛り上がっていた。


各種調査でも個人投資家の年齢層は高いという結果が確かに出ているが、実際に説明会に参加している人々を目の当たりにすると、驚きと同時にある種の不安を覚える。その不安とは、私と同世代の30歳代やその下の20歳代は将来を見据え、資産形成をしっかりと考えて行動しているのかということである。もちろん、私の世代でIRセミナーにまで参加するのは特異な存在かもしれないが、それにしても30歳代で資産運用を意識している人はあまり多くはないのではないか。資産運用について友人と話をすると、投資に熱中している人と全く投資をしていない人に分かれ、全く投資をしていない人の方が多い。おそらく、損をしたくない、投資は難しい、どのような金融商品を買えばよいのかわからないといったことが投資を行わない理由であると思われる。


他方で、ビットコインを含めた仮想通貨への投資は、年齢の若い人々が行っているようである。株式に比べて少額から投資でき、値動きが大きいことが魅力なのだろう。また、仮想通貨で支払いができる商業施設や飲食店が少しずつではあるが増えており、将来的にも増えていくとの期待がある。短期間で1億円を超える資産を築いた「億り人」がメディアに取り上げられたことも要因かもしれない。


では、資産運用、特に株式投資に若い世代が関心を持つようにしていくために、金融機関はどのようなアプローチを考えるべきか。まずは、株式投資を身近な存在にするための情報提供が考えられる。例えば、普段よく利用しているレストラン・居酒屋、洋服店などが、実は上場していて多額の株主優待を出しているといった情報を提供し、株式投資と生活に接点があることを知ってもらうことである。


我々シンクタンクができることは、投資は難しいという心理的ハードルを少しでも下げることであろう。手軽で簡単に金融や投資を学べる環境を作っていくことが一つの方法であると考える。多くの人が金融や投資を十分に学んだ社会の実現自体は一朝一夕に成し得るものではないが、そのための教育を粘り強く続けていくことが肝要である。

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神尾 篤史
執筆者紹介

政策調査部

主任研究員 神尾 篤史