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ICTで中小サービス業の生産性を上げるには

~ICTを清書の道具にとどめるな~

2018年02月01日

金融調査部 主任研究員 鈴木 文彦

1月22日の施政方針演説でも触れられたように、特に中小サービス業の生産性向上が課題とされている。中小企業診断士としての診断経験を振り返ると、こと飲食店と旅館について言えば、従業員数の割に売り上げが少ない、あるいは経費がかさむ事業者の多くで席数や部屋数の平均稼働率が低かった。シーズン期間中や休日などの書き入れ時は満席・満室であっても、シーズンオフや平日の稼働率が冴えないというケースが多い。繁忙期と閑散期、平日と休日との集客の差が大きいほど席や部屋、スタッフの手待ちが多くなる。あらかじめ仕入れた材料のロスも増えるので、料理の原価率が高い割に見た目が貧弱ということもありがちだ。


ニーズを逃したくない、サービスの質を落としたくないという気持ちが先に立ち、席数、部屋数など施設能力やスタッフ数は最も忙しい時期に合わせて決められる。しかしキャパシティを繁忙期に合わせ能力に余裕を持たせるほど閑散期の稼働率は悪くなる。お客が来なくとも時間の経過に従って設備は減耗かつ陳腐化してゆく。暇なときでも最低限のスタッフは必要でそれなりの経費もかかる。こうして経営資源の無駄が累積してゆく。


材料やスタッフの無駄をなくすのにICTは定番の解決策である。ポイントは需要予測の道具としてICTを使うことだ。過去のパターンから数日先の客数を予想。それに合わせて材料の仕入れ量を読み、ギリギリで回すことができる精緻な勤務シフト表を作成する。


もっと良いのは、需要変動に合わせて経営資源の投入量を決めるのではなく、需要そのものをコントロールすることだ。つまるところ、稼働率のピークとボトムの差をなるべく小さくすること、できれば通年で100%に近づけることが、飲食店と旅館に共通する経営改善の重要なポイントである。変動パターンを見出し、繁忙期に上げ、閑散期にディスカウントする料金体系は航空券や旅行パックだけではない。閑散期にプラスアルファのサービスを付けるのもありだろう。イベントはシーズンオフや平日に打つべきだ。


しかるに現状はどうだろうか。ICTが活用されているとしても伝票をきれいに書くなど「清書の道具」になっていないだろうか。POSレジを導入してもレジの打ち間違いをなくすとか、日々の日計表を簡単に作るなど「事務効率化の道具」の段階にとどまっていないだろうか。間違いではないにせよ活用の方法としてはまだ足りない。清書の道具、事務効率化の道具から、需要パターンを読み切り、適切な資源配分を実現するための道具、需要をコントロールして繁閑の平準化を図る道具への発想の転換が必要だ。

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鈴木 文彦

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