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プライマリーバランス、5年振りに悪化

2018年01月10日

政策調査部 経済システム調査グループリーダー シニアエコノミスト 神田 慶司

2017年12月、内閣府は「平成28年度国民経済計算年次推計」を公表した。2016年度における国・地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下PB)は▲16.7兆円と5年振りに赤字幅が拡大したことが明らかになった。


2016年度は安倍晋三内閣が推進する経済・財政再生計画の初年度だった。約80項目の歳出改革は緒に就いたばかりで、中には10年程度の時間をかけて実施されるものもあるが、社会保障給付や公共投資などの増加が抑えられるなど一定の成果が見られた。PBが2015年度よりも悪化した要因は主に歳入側にあり、景気が回復する中で税収が7年振りに減少した。


歳出改革を進めつつ、経済再生により税収を構造的に増やしてPBを黒字化させるというのが安倍内閣の財政健全化策である。だが、歳出改革では2018年度までの国の一般歳出の増加を目安とされた金額に抑制するなど進展が見られた半面、デフレ脱却は実現しておらず潜在成長率の引上げも未だに確認できない。2017年度の税収は再び増加に転じる可能性が高いが、景気回復による税収増だけではPBを黒字化させることは難しい。ひとたび景気が悪化すれば、PB黒字化は大幅に遅れることになる。


安倍内閣は2020年度までのPB黒字化を目指していたが、2017年12月、消費税増収分の使途変更等による幼児・高等教育無償化が盛り込まれた経済政策パッケージを理由に断念した。その際、PB黒字化の達成に向けて、その達成時期と裏付けとなる具体的かつ実効性の高い計画を2018年の骨太方針で示すことが表明された。


仮に経済政策パッケージが実施されなくとも、これまでの延長線上の取組みでは、2020年度にPBを黒字化させることはできなかっただろう。また、デフレ脱却・経済再生を志向すること自体は正しいが、それが容易でないことは過去5年間の政策運営で浮き彫りになった。計画の実効性を高めるには、これまで以上に歳出・歳入改革に重きを置く必要がある。歳出増加額の目安をより厳しく設定して個々の改革を加速させることや、年齢でなく負担能力に応じた負担の徹底、2020年代以降を見据えた消費税率10%超への引上げなどが求められる。

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神田 慶司

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経済システム調査グループリーダー シニアエコノミスト 神田 慶司