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2018年の日本経済はどこに向かうのか?

2017年12月29日

調査本部 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

2017年12月、われわれは、日経BP社から、毎年恒例となった『この1冊でわかる 世界経済の新常識2018』(熊谷亮丸監修・大和総研編著)という単行本を上梓した。同書では、米国トランプ政権の行方、Brexitや難民問題に揺れる欧州経済、共産党大会終了後の中国経済などについて、世界経済のメカニズムや歴史を踏まえた上で、大和総研の選りすぐりのエコノミスト達が考察している。


振り返ると、2017年は激動の年であった。
2017年9月25日、安倍総理は衆議院の解散を宣言した。小池百合子・東京都知事による「希望の党」の立ち上げ、前原誠司・民進党代表(当時)による事実上の合流宣言、小池氏の「排除」発言、枝野幸男氏による立憲民主党の結成・・・・・わが国の政界は「猫の目」の様に、目まぐるしく揺れ動いた。


それでは、2018年の日本経済は一体どこに向かうのであろうか?
2017年12月10日の朝、NHKの「日曜討論」で、茂木敏充・経済再生担当大臣とご一緒させていただいた。番組のテーマは、「“新政策パッケージ” 経済再生の道筋は」である。12月8日に閣議決定された、「人づくり革命」と「生産性革命」の実現に向けた政策パッケージを軸に、今後、政府が実施するべき経済政策などについて、1時間、じっくりと議論させていただいた。


筆者は、現在世界で進行しつつある「第四次産業革命」は、日本にとって大きなビジネスチャンスだと捉えている。
従来のIT分野は、バーチャルな仮想空間が主戦場であった。その場合、少々のバグ(プログラムの誤り)があってもスピード重視で製品を完成させ、デファクトスタンダード(事実上の標準)を確保してしまい、後から問題を修正するというスタイルが有利だった。逆に、丁寧なモノづくりをし、意思決定の遅い日本企業は不利であった。


今後、ITの主戦場はモノづくりと融合した分野に移り、自動運転車やIoT(モノのインターネット)などで、人の生命に関わる製品が生まれてくる。すると、日本企業の丁寧なモノづくりの姿勢が再評価される局面へと変わってくるのだ。
もちろん、日本企業も意思決定のスピードは磨いていかなければならない。2017年夏のダボス会議で、海外の要人から「今までは大きな魚が小さな魚を食べる状況だったが、これからは敏捷(しょう)な魚が遅い大きな魚を食べる時代になる」という発言があったのは印象的だった。


また、日本企業の製品は、技術レベルは高くても、必要ない機能が多かったり、値段が高すぎたりと、消費者のニーズに合っていないことが多い。その点、韓国企業は、技術レベルは並でも、徹底したマーケティングによって消費者のニーズに合致した製品を、手頃な値段で提供し、市場シェアを獲得してきた。
「技術で勝って商売で負ける」を繰り返してきた日本企業だが、裏を返せば高い技術力は既に持っているので、マーケティングやデザインなどの周辺分野を磨いていけば、まさに「鬼に金棒」となるはずだ。


NHKの番組の最後で、筆者はAI(人工知能)についても言及した。本稿では、人間とAIの関係について、以下のポイントを指摘しておきたい。


現在、東京大学と大和証券グループが合同で実施している「未来金融フォーラム」で、資産運用にAIを活用する議論などを行っているが、その中でAIの弱点も見えてきた。


第一に、マーケットのトレンドが大きく変化する局面でAIは弱い。AIは物事を過去の延長線上で思考するが、変化の局面で必要になる創造性では人間にかなわない。第二に、対人関係能力の弱さだ。株式投資は「自分がいいと思う銘柄」ではなく、「多くの人がいいと思うであろう銘柄」への投資で利益が得られる。つまり、他人の思考を推測する必要があるが、その能力がAIは弱い。
また、AIは物事を抽象化することも苦手である。抽象化するには、何かの要素を拾う代わりに、他の要素を捨てなければいけない。ある種の「いいかげんさ」がなければ、抽象化はできないのだ。逆に、人間はその「いいかげんさ」を持っていたからこそ、環境の変化にも柔軟に対応し、生き残ってきた。


将来、論理的思考力に長けたAIは社会の各分野に進出していくだろう。だが、創造性や対人関係能力、物事を抽象化する能力、そして「いいかげんさ」は、人間の存在意義として残っていく。日本人がそれらの能力を伸ばすためにも、今こそ教育システムの変革が求められている。


これらの視点を踏まえて、2018年に日本経済が新たな飛躍に向けた第一歩を踏み出すことを、大いに期待したい。

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熊谷 亮丸

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