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初EPA発効から15年の節目に

2017年08月22日

経済調査部 エコノミスト 増川 智咲

トランプ政権発足を機に表明された、米国のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)離脱は各国に衝撃を与えた。TPP交渉はこのまま頓挫するのではないかといった観測も一時流れ、期待が失望に変わりかけた。そのような中、残された11か国での発効を目指し、議論のイニシアチブを取ろうとしているのが日本である。現在は、11か国で発効条件等を含めた交渉を開始している。7月に大枠合意に至った日本とEUのEPA(経済連携協定)を含め、広域EPA/FTA(自由貿易協定)に対する日本の姿勢は積極的である。

しかし実は、日本がこのようにEPA/FTAに対して積極的になったのはごく最近のことである。今年、日本で初めてEPAが発効してから15年になる。最初のEPAは、対シンガポールである。日本企業が積極的に東アジアへ分業体制を構築する中、政府もそれを支援する形でEPA締結に動いた。当時の森首相が、シンガポールと正式にEPA交渉を開始する旨を発表したのが2000年10月だった。翌年10月に大枠合意に至り、2002年11月に発効とトントン拍子で議論が進んだ。

これをきっかけに、日本は各国とのEPA/FTA締結を加速させ、これまでに発効・署名した数は、交渉中のものも含めると20を超える。また、交渉相手も対「国」から、対「地域」(例えば、対ASEAN、対環太平洋、対EU)と広域化しているのが特徴である。さらに、その内容も包括的になっており、すでにWTOのルールとして法的実効性がある項目から、WTOルール外の項目、例えば、環境、競争、投資等も含むようになっている。

なぜ、これほどまでに日本はEPA/FTA締結に積極的なのか。それはもちろん、「先に国際ルールを作るため」である。2015年10月に大筋合意に至ったTPPのように、多くの国が参加する取り決めにおいてより高度なルールを形成することは、それが一種の貿易秩序となりやすい。そして、新たに結ばれる通商協定もその基準に収斂されるようになる。例えば、日本とEUのEPAにおいても、先に大筋合意に至ったTPPの内容がたたき台となっている。

ルール作りが重要となる背景には、中国の存在がある。国有企業や知的財産権など、EPA交渉には中国が慎重にならざるを得ない分野が含まれている。協定の内容が包括的になればなるほど、中国は積極的になりにくい。それを横目に見ながら、早い段階でルールを形成したいと考えているのが日本である。そう考えると、EPA発効15年を迎える今年、貿易秩序形成のイニシアチブを取るといった点で米国のTPP離脱は「失敗」ではなく、日本にとって「チャンス」と捉えることが可能ではないか。

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