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人をつなぐお金の力

2017年08月01日

物江 陽子

TABLE FOR TWO(TFT)という活動をご存知だろうか。弊社グループのカフェテリアでも導入されているのだが、社食や学食などでカロリーや栄養バランスに関する一定の要件を満たしたランチを食べるときに支払う代金のうち20円が、寄付金として途上国の学校給食の支援に充てられるという取組みである。世界の約70億人のうち、約10億人が飢餓や栄養失調に苦しむ一方、約20億人が肥満に苦しむ、という食の不均衡を解消するために開始されたという。先進国でヘルシーなランチを一食食べれば途上国の子どもに一食が提供されることから、TABLE FOR TWO(二人の食卓)だというわけである。

2007年に日本で開始されたこの取り組みは、アメリカやスイスなど他国にも広がっている。現在国内で約650の企業や団体が参加し、参加人数は700万人を超えたという。この取組みにより、アフリカを中心とする支援先地域でこれまでに5千万食以上の給食が提供されている。給食は子どもたちの空腹を満たすだけでなく、学力や体力の向上、疾病の予防などの効果をもたらしているに違いない。

先日、このTABLE FOR TWOの活動報告会に参加し、参加企業の方とともに、資本市場におけるサステナブル投資についてお話しする機会をいただいた。当初、サステナブル投資とこの活動は直接つながるものではないと考えていたのだが、参加企業や事務局の方々とお話しするなかで、根底では共通するところがあることに気がついた。

前回のコラム(※1)でも触れたが、サステナブル投資を主導する欧米の公的年金は、投資が社会的な諸課題に与える影響に敏感で、投資が環境破壊や人権侵害に関わるのを避けると同時に、社会的な諸課題の改善に資することを求めている。背景には、投資家にとって、経済社会の持続可能性を支えることが結局は投資ポートフォリオ全体の利益になるというユニバーサル・オーナーシップの考え方がある。資産保有者の世代交代が進むなか、ミレニアル世代によるサステナブル投資へのニーズも増しているという。そして、サステナブル投資の考え方は、現在わが国の資産運用業界でも急速に取り入れられつつある。

年金基金によるサステナブル投資は極めて巨額であり、かつ受託者責任を果たすために金銭的なリターンをあげなければならない投資である。一方、TFT活動で寄付されるお金は、ランチ一食あたり20円という金額、しかも金銭的なリターンを求めない寄付であり、両者は大きく異なる。しかし、より良い社会、より良い未来につながってほしい、という願いが託されたお金という点では共通するものがあろう。

TFT活動報告会では、参加企業各社がそれぞれヘルシーかつ魅力的なランチメニューを考案し、様々な工夫を凝らして活動を盛り上げている様子が印象的だった。社食での取組み以外にも、SNSを使ったアクションやスポーツイベントとの連携などに活動が広がっているようだ。SNSを使ったアクションには5,000人以上が参加し、大学での取組みには約2,000人が参加するなど、若い世代の参加も多い。わが国では欧米と比べると寄付文化が根付いていないと言われる。だが、将来不安が言われ、個人消費の低迷が続くなかで、TFTのような活動が広がっているのを見ると、お金を通じて社会に貢献したいというニーズは、わが国でも実は結構あるのではないかと思えてならない。

(※1)「未来につなぐ資産運用

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